HOME > 経済社会 > ダイジェストニュース

調査結果、原発事故や放射能への不安は文系・低所得層ほど拡大(慶応大学)

2012年2月16日(木) 15時30分

震災後の生活満足度、低所得者・非正規雇用者の方が増加傾向


個人属性別にみた震災前後の所得・ストレス・幸福度・生活満足度の変化の画像
個人属性別にみた震災前後の所得・ストレス・幸福度・生活満足度の変化
原発事故・放射能不安(左図)と、不安による睡眠時間、購買行動、心身症状の違い(右図)の画像
原発事故・放射能不安(左図)と、不安による睡眠時間、購買行動、心身症状の違い(右図)
震災後の価値観の変化と生活時間配分の変化の画像
震災後の価値観の変化と生活時間配分の変化
震災前後の健康感の変化(構成比、%)の画像
震災前後の健康感の変化(構成比、%)
 慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターは2月15日、「東日本大震災に関する特別調査」の概況(第1回)〜震災で日本人の心理や行動はどう変わったか〜を取りまとめて公開した。

 同調査は、同大学大学院経済学研究科・商学研究科/京都大学経済研究所連携グローバルCOEプログラム「市場の高質化と市場インフラの総合的設計」の事業の一環として、昨年6月に第1回調査、10月に第2回調査を実施したもの。調査対象世帯は、同センターが実施している既存の家計パネル調査の回答世帯で、全国の4,150世帯から回答を得た。

 震災前後の所得減少は低所得者や非正規雇用者、自営業主、20代・50代で顕著となった。また、ストレスの増加は低所得者や非正規雇用者、無業者、20代で多かった。一方で、生活満足度や幸福度については、そうした人々のほうがむしろ増加させており、その中では高所得者の伸びは小さかった。

 この結果について同センターは、今後の研究課題として注目できるとしている。たとえば、行動経済学や心理学の分野では、自分と同じ境遇の他者と比較をして幸福度・満足度を判断すると言われており、震災の影響は低所得者層や非正規で大きいが、「他人よりも自分のほうが相対的には悪くない」と思うことで生活満足度は高まったと解釈もできるとしている。

 「原発事故全般に対する恐怖・不安」と「食料や水の放射能物質による汚染に対する恐怖・不安」を感じる度合いを100点満点で回答してもらった質問では、原発事故全般に対する不安感は、震災直後に比べ6月時点に増大している(原発不安:69→77点、放射能汚染不安:61→71点)。また、恐怖・不安感は、文系、低所得層、非正規雇用者、無業者、未就学児がいる人、東北3県(福島・宮城・岩手県)の居住者ほど高い結果となった。

 さらに、恐怖・不安感の強い人ほど、睡眠時間が減っていたり、飲料・食料などの買い溜めをしていたり、友人・知人との繋がりを求めたりする行動が顕著にみられる。

 震災後の価値観と生活時間配分の変化をみてみると、東日本大震災後に「仕事よりも家族・友人・知人を大事にする」という価値観が強くなった人の割合は、既婚で関東・東北地方に居住する男性が39.3%、女性が33.9%、関東・東北地方以外の男性が28.0%、女性が30.1%となっており、関東・東北地方で震災後に顕著に価値観を変えたことが伺える。また、これらの人は震災後に家事・育児時間を増加させ、労働時間を減少させた傾向がみられる。家事・育児時間の増加は女性の方が顕著で、労働時間の減少は男性が顕著になっている。

 震災が人々の健康感(「よい」から「よくない」まで5段階で選択)に与えた影響をみてみると、5~6月の健康感が1月時点よりも悪化した人の割合は、全体の33%となっている。東北3県で顕著では、全体の43.8%の人の健康感が悪化している。このほか関東地方も34.8%の人が健康感を悪化させている。

 さらに、ストレスについても震災前後を比較してみると、「将来に不安」と感じる人が多くの地域で増えているほか、東北3県では「寝つきが悪い」という症状を持つ人の割合が大幅に増加している。東北3県ではストレス症状についても他地域よりも悪化している。
《前田 有香@リセマム》

注目ニュース

icon
被災地を守る「ウルトラ・ポリス・フォース」 福島県警が設立

福島県警は1日、東日本大震災を受けての治安情勢変化に対応するため、全国から特別出向した警察官350人を採用した。福島県出身で円谷プロダクションの設立者である故円谷英二氏にちなみ、ウルトラマンをデザイン...

icon
経産省、東日本大震災の復興支援制度検索サービスを開始

 経済産業省は17日、国や地方自治体等が東日本大震災の復旧・復興のために整備している支援制度を検索できるサイト、「復旧・復興支援制度データベース」を開設した。

icon
阪神・淡路大震災から17年、Twitterで追悼ツイート

 1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災から今日で17年。Twitter上には“追悼ツイート”が多数アップされている。

icon

NRIセキュアは、「企業における情報セキュリティ実態調査2011報告書」を公開した。

icon

事故や災害に備える事業継続管理(BCM)が十数年前から議論され、国際標準化に向けた作業も進められています。日本でも都市圏の直下型地震の発生が懸念される中、ガイドラインが制定され、企業や行政機関において...

icon

事故や災害に備える事業継続管理(BCM)が十数年前から議論され、国際標準化に向けた作業も進められています。日本でも都市圏の直下型地震の発生が懸念される中、ガイドラインが制定され、企業や行政機関において...

icon

事故や災害に備える事業継続管理(BCM)が十数年前から議論され、国際標準化に向けた作業も進められています。日本でも都市圏の直下型地震の発生が懸念される中、ガイドラインが制定され、企業や行政機関において...

icon

事故や災害に備える事業継続管理(BCM)が十数年前から議論され、国際標準化に向けた作業も進められています。日本でも都市圏の直下型地震の発生が懸念される中、ガイドラインが制定され、企業や行政機関において...

icon

事故や災害に備える事業継続管理(BCM)が十数年前から議論され、国際標準化に向けた作業も進められています。日本でも都市圏の直下型地震の発生が懸念される中、ガイドラインが制定され、企業や行政機関において...

icon

事故や災害に備える事業継続管理(BCM)が十数年前から議論され、国際標準化に向けた作業も進められています。日本でも都市圏の直下型地震の発生が懸念される中、ガイドラインが制定され、企業や行政機関において...

icon
大震災と事業継続管理 第7回「BCMの新しい視点」

事故や災害に備える事業継続管理(BCM)が十数年前から議論され、国際標準化に向けた作業も進められています。日本でも都市圏の直下型地震の発生が懸念される中、ガイドラインが制定され、企業や行政機関において...

この記事へのツイート

RSS

特集・連載

ピックアップフォト