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原発事故訓練 広域想定で実施

2月16日 12時12分

原発事故訓練 広域想定で実施
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東京電力福島第一原子力発電所の事故で、放射性物質が広い範囲に拡散したことから、原発事故による住民の避難や防災対策の想定の範囲をこれまでより広げた訓練が、愛媛県や島根県などで行われています。

東京電力福島第一原子力発電所の事故で放射性物質が広い範囲に拡散したことから、原発事故による住民の避難や防災対策の想定の範囲をこれまでより広げた訓練が、愛媛県や島根県などで行われました。
愛媛県では、大地震の影響で四国電力の伊方原発から放射性物質が外に漏れるおそれがあるという想定で訓練が始まりました。
福島第一原発の事故を受けて、国は、原発事故に備えた避難などの防災対策を整備する範囲を、原発の半径10キロから30キロに拡大したことから、今回の訓練には、これまでで最も多いおよそ1万人が参加しました。
避難訓練では、大型バスやヘリコプターのほか、初めて海上自衛隊などの船も使われていて、広域的な避難の手順などを確認しました。
このうち、伊方町では、住民が中学校に集まったあと、大型バス2台に乗っておよそ50キロ離れた避難場所に向けて出発しました。
原子力の防災訓練で伊方町の住民が町の外に避難するのは今回が初めてです。
参加した63歳の男性は「町外に避難するとなると、お金や生活用の荷物をまとめることも考えなくてはいけない」と話していました。
一方、島根県では、中国電力の島根原子力発電所での事故を想定し、島根県と鳥取県の6つの市の職員が集まって連携の確認をする訓練が行われました。
訓練では、福島第一原発の事故で、国や自治体の間の連絡がスムーズに取れなかったことを教訓に、松江市にあるオフサイトセンターと呼ばれる防災拠点に、原発から30キロ圏内にある島根県と鳥取県の6つの市から職員が派遣されました。
事故対策の会議では、参加者が住民の避難やけが人の搬送などでの連携の手順を確認していました。
今回の訓練では、島根県の避難計画がまだ出来ておらず、住民の避難は見送られたほか、原発からおよそ9キロにある島根県庁やオフサイトセンターの代替施設も決まっておらず、課題を残したままで実施されました。

30キロ圏に防災計画義務づけ

東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、避難などの防災対策を整備する範囲が、これまでの原発の半径10キロから30キロに拡大されることから、原発の地元や周辺の自治体は、防災訓練だけでなく、原発事故を想定した新たな地域防災計画を作ることを義務づけられます。
福島第一原発の事故では、避難や屋内退避の範囲がそれまでの想定をはるかに超えて半径30キロ以上に及んだことから、国は、ことし4月に法令を改正し、避難などの防災対策を整備する範囲を、これまでの半径10キロから30キロに拡大する方針を決めました。
その結果、対象となる市町村は130余りと、従来のおよそ3倍に増え、これらの市町村や道府県は、原発事故を想定した新たな地域防災計画をことし10月初めごろまでに作ることを義務づけられます。
新たな地域防災計画では、▽重大な事故や自然災害との複合災害への対処をはじめ、▽事故が広域に及んだ場合の対応、▽被災者の生活支援や除染、▽それに、援護が必要な人への配慮などについて、具体的に決めることになります。

自治体から不安の声も

しかし、自治体の多くが、原子力事故への備えや広域避難の経験がないうえ、国も原発事故に備えた防災指針を見直している途中で、自治体の間では「地域防災計画を半年余りで完成させることは困難だ」といった不安の声が広がっています。
茨城県北部に位置する大子町は、南側の一部が日本原子力発電の東海第二原発の30キロ圏内に入ります。
町の地域防災計画には、これまで原発事故に備えた対策は盛り込まれていなかったため、一から作ることが求められていますが、町のおよそ280人の職員に原子力の専門はおらず、防災担当の職員2人は、慣れない原子力の専門用語をインターネットや本で一つ一つ調べている状況です。
さらに、行政改革で職員を削減した影響で、防災担当職員は選挙事務や庁舎管理などの業務も兼務していて、原子力の防災対策を集中して検討する余裕はないといいます。
大子町は、2万人余りの人口の35%が65歳以上と、高齢化が進んでいるうえ、防災行政無線もなく、原発事故が起きた場合、点在する集落の高齢者をどう避難させるのかなど、課題が山積しています。
大子町で防災を担当する総務課の飯岡隆志係長は「全然分からない状況から原発事故に備えた防災計画を作らなければならず、時間的にも能力的にも半年余りで計画を作るのは今のところ難しい」と話し、計画作りにあたっては国による支援が欠かせないと指摘しています。