『スーパージャイアンツ』シリーズ全9部作は、当時のテレビの人気番組『スーパーマン』(56年)に材を得た、特撮を駆使した日本初のスーパーヒーロー映画である。
 第1部の主なストーリーは、世界各国で相次ぐ原水爆実験の影響は遥か宇宙空間にまで及んでいた。この事態を受けてエメラルド彗星で開催された宇宙人会議は、地球に原水爆実験の即時中止を勧告すべく、一人の使者を地球に派遣する事とした。それがエメラルド彗星の中でも一番に優れた超人・スーパージャイアンツであった。彼は弾丸を跳ね返す鋼鉄の肉体を持ち、自在に飛行する能力とガイガー計数機の役割をも果たす“地球計”を左手に装備し、地球平和のために縦横無尽の活躍を果たすのであった…。 スーパージャイアンツの主な敵には、第1〜2部が地球征服を狙う秘密結社アトムAB団、第3〜4部が原因不明の奇病を流行らせる怪星人カピア、第5〜6部が原爆ロケットを装備した黒い衛星、第7部が宇宙人の臓器から細胞分裂を果たした宇宙怪人、第8部が死者を甦らせた魔女、第9部が皇太子暗殺を狙うピアス国の革命団で、毎作登場する多彩で強大な敵が、スーパージャイアンツの活躍を劇的に盛り上げるのである。
本作の製作は、戦後の東宝大争議を経て東宝から分派し、昭和22年に誕生した新東宝。昭和30年、同社の社長に就任した大蔵貢の指揮下、東宝のSF大作『地球防衛軍』(57年)の公開前後の、昭和32年から僅か2年の間に全9作が製作、公開されている。 特撮の主な見せ場は、専らスーパージャイアンツの飛行シーンであり、コニカ製の3色分解方式のワンショット・カメラの使用で、質の高い合成シーンが産み出されている。
監督には、初期6作を石井輝男、第7部を三輪彰、第8〜9部を赤坂長義らが担当し、スーパージャイアンツ役には、全作、若手スターの宇津井健が体当たりで演じている。
本作はもちろん、子供向けの勧善懲悪の娯楽作品ではあるが、その根底には、原水爆実験の人類への影響(第1〜2部)や、人工衛星の兵器としての脅威(第5〜6部)等のメッセージが込められているのである。
中村 哲(ナカムラサトシ)
1963年、東京都生まれの特撮ライター。今回の原稿執筆をしていて、自分が初めて購入したレーザーディスクのソフトが、『明治天皇と日露大戦争』のスタンダードサイズのソフトであった事を、ふと思い出しました。