2012年2月17日11時11分
■公長齋小菅のお弁当箱
なんの変哲もないおかずとご飯でも、この竹製のお弁当箱に入れるだけで料亭弁当に見える。例えば、冷凍食品のミートボールが和風手作り肉団子に。形が整っていない卵焼きがだし巻き卵に。ふたを開けた時の気分は上々。そんな日常の一コマに潤いをくれる竹製の道具をつくっているのは、京都市中京区の公長齋小菅(こうちょうさいこすが)。
常務の小菅達之さん(30)によると、先祖は江戸後期、日本画の四条派、松村呉春に師事した後、独立。紀州徳川家の御用絵師として仕えていたという。小菅さんの曽祖母が1898年に東京・日本橋で竹製品の問屋として創業。その後、拠点を京都に移した。
問屋業からメーカーへ脱却をはかったのは、小菅さんの父親である現在の社長が家業を継いだとき。安い物へ、安い物へという世の流れの中、独自商品で差別化をはかり勝負しようとしたのだ。
商品はどれもモダンで、デザイン性が高い。企画は父子で担当。2人とも商学部出身で、デザインを専門に学んだ経験はない。「感性は一代にして身につくものではなく、画家だった先祖から受け継いでいるんだと父がよく話しています。引き出しが増えるよう、普段から色んなものを見て感性を養うように心がけています」と小菅さん。
店内の壁面には、大輪の花のような竹製の飾りが並ぶ。実は竹かごの底の部分で、ここから編んでかごになっていく途中のもの。ヘラやスプーンは竹の筒の形や湾曲した部分を生かしてつくっている。器や菓子箱、大根おろしなど竹の可能性とアイデアが合体したものばかりだ。モダンで、しかも和の感覚たっぷりの商品は、外国人観光客から「ファンタスティック」と喜ばれている。
店員のおいっ子が竹の弁当箱を学校に持って行ったら、弁当の中身が違って見えて「何これ、すごい」と同級生から絶賛されたという。小菅さんは「私たちが商売している意味はそこにある。世の中には便利なものがいっぱいあるけれど、竹を使うことで日々の暮らしを豊かに感じてもらえればという思いです」と話す。(中塚久美子)
■data 公長齋小菅(こうちょうさいこすが) 京都市中京区三条通河原町東入ル中島町74 ロイヤルパークホテル・ザ・京都1階 電話075・221・8687 午前10時〜午後8時