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東日本大震災:福島第1原発事故 損害賠償、自主避難「実費」認める 新基準で増額

 東京電力福島第1原発事故の損害賠償で、東電と被災者が合意できない場合に仲介する文部科学省の「原子力損害賠償紛争解決センター」は16日、和解を早期に成立させるための総括基準を公表した。政府の避難指示区域以外の福島県内の23市町村から避難した人(自主避難者)の賠償額について国の指針は大人1人8万円、子供(18歳以下)と妊婦は同40万円としたが、避難のためにかかった実費が国の賠償指針を上回れば、賠償額として認めた。

 該当するモデル事例として、避難先までの旅費や宿泊費、電化製品の購入費や家族が分かれて暮らした場合などの生活費の増加分に加え、一律賠償額の半額相当の慰謝料(大人1人4万円、子供と妊婦20万円)を合計した金額が一律賠償額を上回る場合を挙げている。申し立てを受けた場合、同センターが東電に和解案を提示する。

 一方、政府指示で避難した人について国の賠償指針で認めている精神的損害の賠償額(1人月額10万円)についても、身体障害者や要介護者、妊婦、避難所の移動回数が多かった人などは、通常よりも避難生活への適応が難しいため、増額できるとした。

 また、避難区域内にある住宅や企業の事業所などの不動産の価値が失われた場合、国の指針で賠償対象となっているが、東電が応じることに消極的なため、「速やかに賠償すべき損害」と明示した。【野田武】

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 ◆原子力損害賠償の総括基準の骨子◆

1・避難者の第2期(7カ月目から6カ月間)慰謝料

 (1)避難などの対象者

 「今後の生活の見通しへの不安に対する慰謝料」は、1人月額5万円を目安

 (2)避難所などへの避難者

 「日常生活阻害慰謝料」は、中間指針の目安額(1人月額5万円)から約7万円へ

2・精神的損害の増額理由など

 「日常生活阻害慰謝料」について、要介護状態、身体や精神の障害などの理由があり、通常の避難者と比べて精神的苦痛が大きい場合、中間指針の目安額より増額が可能

3・自主避難をした人がいる場合

 対象者の特徴(子供と妊婦が含まれるか)、避難時期や放射線量の情報の有無などの要素を総合的に考慮し、実費に精神的苦痛に対する慰謝料を加算した額が、中間指針の目安額(40万円か8万円)を上回る場合、この合算額を賠償額とする

4・避難など対象区域内の財物損害の賠償時期

 動産と不動産の価値喪失・減少分などの損害は、現状が確認できなくても、速やかに賠償すべき損害と認められる

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 ◇自主避難者で実費が認められるモデル事例

 (1)昨年3月15~25日に東京へ避難(指針の賠償額は8万円)

旅費         2万6000円

宿泊費(10泊分)      7万円

慰謝料            4万円

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合計        13万6000円

 (2)父、母、中学生の娘の3人家族で母娘が昨年7月から札幌市へ避難(指針の賠償額は56万円)

旅費(2人分)      5万円

電化製品購入費     10万円

中学校の制服代      3万円

二重生活による生活費  18万円

(12月までの半年分)

慰謝料    父     4万円

       母     4万円

       娘    20万円

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合計          64万円

毎日新聞 2012年2月17日 東京朝刊

 

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