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イスラエル イラン先制攻撃辞さず

2月16日 19時10分

イスラエル イラン先制攻撃辞さず

日本を訪れているイスラエルのバラク国防相は、NHKの取材に対し、核開発を続けるイランに対して国際社会が一層、制裁を強化する必要があるとして、日本にもイランからの原油の輸入を大幅に削減するよう求める一方で、制裁が効果を上げなければイランの核施設への先制攻撃も辞さない姿勢を示しました。

日本を訪れているイスラエルのバラク副首相兼国防相は、16日、都内で、NHKの単独インタビューに応じました。
バラク国防相は、イランが15日、ウラン濃縮の効率を上げる新型の遠心分離機を開発したと発表するなど、核開発を推し進めていることについて、「世界を欺いて核武装に向かっている」として、強い警戒感を示しました。そのうえで、欧米がイラン産原油の輸入禁止などの制裁を強化していることを歓迎し、「日本も欧米と足並みをそろえて制裁を強化すべきだ」と述べ、日本に対してイラン産の原油の輸入量を大幅に削減するよう求めました。
さらに、イスラエルがイランの核施設への先制攻撃に踏み切るのではないかという懸念が広がっていることについて、「今は制裁の効果を見極める時期だ」として慎重な姿勢を見せる一方で、「イランの核武装は断じて受け入れられず、それを阻止するためにはあらゆる選択肢を排除しない」と述べ、制裁が効果を上げずイランが核開発を断念しなければ軍事行動を起こす可能性を改めて示唆しました。

イランの核を警戒

イスラエルは、イランの核開発問題を国家の存亡に関わる安全保障上の最大の脅威として捉えています。
この背景には、イランのアフマディネジャド大統領らが、「イスラエルを排除しなければならない」などと発言して、イスラエルを激しく敵視していることがあります。イスラエル政府は、イランが核開発を続けて核兵器を手にするような事態になれば、イスラエルに対して使用しかねないとの危機感をあらわにしています。
ネタニヤフ首相は、イランの核開発の危機について、先月、第2次世界大戦中にユダヤ人がナチス・ドイツによって大量虐殺されたホロコーストになぞらえ、「世界は再び大量虐殺が起きることを防がなければならない」と述べ、核開発を断じて阻止すべきだとしています。
イスラエルは、当時、国際社会がホロコーストを防げなかったという経験から、自分たちの身を守るためには、単独でも実力行使に踏み切る必要があると考えています。実際、イスラエルは、過去にも、イラクの原子炉とシリアの建設中の原子炉とみられる施設を空爆して破壊しています。このため、イスラエルは、かねてから国際社会にイランに核開発を断念させるよう制裁を強化するよう呼びかけるとともに、最終的には軍事攻撃によって核施設を破壊することも辞さないという構えを、見せているのです。
一方で、先月には、イスラエルのシンクタンクが、「核兵器を手にしたイランとイスラエルは共存できるか」という論文を発表するなど、国内では攻撃以外の選択肢も模索すべきだという声も上がっています。

“秘密の戦争”

イランでは先月、首都テヘランで核開発に関わっていたとみられる大学教授が車に爆弾を取り付けられて死亡するなど、おととしから、核物理学の専門家を狙った事件が相次ぎ、これまでに4人が死亡しています。イラン側は、事件の手口などから、「核開発を阻止しようとするイスラエルの工作員による犯行だ」と断定して強く非難しています。
また、去年11月には、首都テヘラン近郊にあるイランの革命防衛隊の軍事施設で、大きな爆発が起き多数の兵士が死亡しました。この爆発を巡って、イラン側は事故だったと説明していますが、死亡した関係者の中にはイランの弾道ミサイルの開発責任者が含まれており、ミサイル開発の阻止を狙ったイスラエルの特殊工作員による犯行だったという見方もあります。
一方で、今週、インドとグルジアでは、イスラエルの外交官らの車が爆発したり、爆発物をしかけられる事件が相次いで起きたほか、タイの首都バンコクで起きた爆発事件では、イラン人と見られる男2人が拘束され、治安当局が、イスラエル大使館の関係者を狙ったテロ未遂事件の可能性もあるとみて調べています。こうした事件については、イランが科学者の暗殺に対する報復として、イスラエルを標的に引き起こしているとの見方が浮上しています。
イランとイスラエルとの対立は、両国の工作員が第3国を舞台に破壊活動を繰り広げる、いわば「秘密の戦争」にも発展しているともいわれています。