トヨタ自動車は9日、輸出用SUV(スポーツタイプ多目的車)「ハイランダー」の生産を、2013年後半をめどにトヨタ自動車九州(福岡県)から米国インディアナ工場に移すと発表した。大地震や円高にもかかわらず、トヨタはこれまで「国内生産」「雇用保護」という立場を守ってきたが、戦略を変更した格好だ。トヨタは韓国市場でもこれまでに比べ約10%安い低価格プリウスを投入し、攻撃的な販売競争を展開する計画だ。トヨタは奪われた世界首位の座を奪還するため、総反撃に突入した。
北米トヨタ自動車の稲葉良み(目へんに見)社長は8日、米国シカゴで開幕した「2012シカゴ・モーターショー」で、同社がインディアナ工場に4億ドル(約308億円)を投資し、これまで日本で生産していたハイランダー・ハイブリッドを年5万台を生産すると発表した。稲葉社長は「米国で作られたトヨタ車は、世界21カ国に計10万台以上輸出されており、米国製カムリ、シエナは韓国にも輸出され始めた」と述べた上で、インディアナ工場で生産したハイランダーがオーストラリア、ロシアなどに輸出されるとの見通しを示した。
九州のハイランダー生産ラインは、徐々に稼働率を下げ、来年末に完全に操業を終える予定だ。ウォール・ストリート・ジャーナルなど米メディアは「トヨタが過去最悪の円高に耐えるため、特別な決定を下した。今回の決定により、インディアナ(工場)で400人分の雇用機会が生じた」と歓迎した。トヨタのミシシッピ工場は、カローラの日本からの輸入分を現地生産に切り替えるため、今週から2交代勤務に入った。
トヨタの決定に日本の国民は動揺している。昨年3月の東日本巨大地震の直後、豊田章男社長は「製造業を取り巻く環境はますます悪化しているが、われわれができることはしなければならない」と述べ、日本国内の子会社を統合し、日本での生産体制を強化していく姿勢を示していたからだ。