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社会

日本のワカメ世界を席巻 船のバラスト水に交じり拡散 

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桟橋の橋げたにもワカメが繁殖している=ニュージーランド・ウェリントン(川井浩史教授提供)

桟橋の橋げたにもワカメが繁殖している=ニュージーランド・ウェリントン(川井浩史教授提供)

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ニュージーランドの岩場を埋めたワカメ

ニュージーランドの岩場を埋めたワカメ

 日本の食卓を彩るワカメが世界の海の生態系をおびやかしている。本来は北東アジアにしか自生しないが、北米や地中海、オセアニアなど世界12カ国で確認され、繁殖域を拡大中だ。大型輸送船のバラスト水に交じって広がったものとみられ、国際海事機関(IMO)はワカメを「海洋環境に顕著な影響を及ぼす10種」に指定し、各国に注意を呼び掛けている。(木村信行)

 ワカメは北東アジア原産のコンブの一種。日本や韓国では養殖もされるが、食文化のない欧米などでは漁網に絡まり、生態系を破壊する「脅威」と見なされている。

 神戸大学内海域環境教育研究センターの川井浩史(ひろし)教授らのグループが生息状況を調査し、2011年末、国際環境研究協会発行の「地球環境」で発表した。川井教授によるとワカメが自生する日本、韓国、中国と、本来の生態系には生息しない6カ国のワカメのDNAを照合。その結果、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、米国、メキシコで日本産に近い遺伝子型が確認された。

 ニュージーランドでは1987年の発見から約10年でほぼ全土に拡大。その後の調査で少なくとも世界12カ国に広がっていることが分かった。

 原因は船のバラスト水だ。大型船は港で貨物を降ろした後、船体が浮くのを防ぐため大量の海水を積む。その際、ワカメの種子に当たる2〜3ミリの「配偶体」など多数の外来生物が交じり、新たな港で貨物を積む際、そのまま排出される。

 日本船主組合によると世界では年間約100億トンのバラスト水が移動。日本は約3億トンを排出する世界有数の「バラスト水輸出国」だ。海藻が船体に付着して拡散するケースもある。

 川井教授によると、ニュージーランドのウェリントン港では岩場に大量のワカメが繁殖し、下草に光が当たらず在来種を圧迫。漁網に絡まり水産被害も出ている。繁殖域も水深10メートルに広がり政府が対策に乗り出した。

 IMOは04年、バラスト水の排出を規制する「バラスト水管理条約」を採択した。だが日本など海洋国で未批准の国があり、まだ発効していない。国土交通省海事局安全基準課は「処理装置の技術が不十分な上、排出の安全基準がはっきりせず現段階では条約の実効性に疑問がある」としている。

 川井教授は「バラスト水ではワカメ以外にも外来生物の移入が増え、生態系や水産資源へのリスクが高まっている。日本は率先して対応するべきだ」と指摘する。

【バラスト水管理条約】 有害水生生物や病原体の移動を防ぐため国際海事機関が採択した。発効は「30カ国以上、世界の商船輸送力の35%以上」が条件で、2011年末までにフランスやノルウェーなど32カ国が批准したものの、輸送力は26%にとどまり発効に至っていない。発効すれば処理設備の設置、沖合での水交換などが義務付けられる。

(2012/02/15 16:02)

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