2012-02-16 18:44:18

質問と回答 なぜ医師は訴えがなければ問題ないと考えるのか?

テーマ:質問と回答
ーーーーここから引用ーーー少し改変しました
J&J さんより質問
初めてお邪魔します。
5年前に肺がん検診を受け、手術。「上皮内癌」でした。6年前に姉がⅣステージの肺がん。抗がん剤治療を受けましたが、白血球が下がりすぎて断念。その後、http://www.shoufukai.or.jp/ukeru/senmon_meneki.htmlにて、順調でしたが、一年前の夫のガンで状況が悪化。先日、息を引き取りました。
「医師は患者さんが訴えなけば問題はないのだろうと考える習慣」は、どのようにして作られてきたのでしょうか?訴えが無いのだから当然、と思えますが、患者側としては、中身が専門的・医師対患者という図式・すがる思い・精神的にも物理的にも余裕がない、などの理由で、質問できない患者が大多数です。昨日、インフルエンザで病院へ。医師が「点滴します?」と。「何の点滴?」これでは、返事も出来ません。私がお世話になる病院の医師の多くがこんな感じです。「勇気」を出して質問すると、大ざっぱな答え。
実態です。
医療批判ではなく、先ず、理解し歩み寄ることから、良いものが生まれると思うのですが、どうしてもこのようなコメントになってしまいます。

鎌田實さんの諏訪中央病院の様な病院で治療を受けたいと思います。
ーーーーここまで引用ーーー

こういう具体的な質問があるとそれを軸に回答するだけなので、記事が書きやすい。
テレビ番組で解説委員が独白するのはではなく、アナウンサーが質問に回るとテンポが良くなるのと同じかな。

さて「医師は患者さんが訴えなけば問題はないのだろうと考える習慣」というのは必然性から出てきたものが大きいと個人的には考えています。

数時間待ちの5分診療と日本の診療形態が批判されていますが、一日に数十人を外来診療しなければならない医師の心理を書いてみよう。

一応予約時間はある程度決まっているが、検査→診察→処方(+外来化学療法)という決まったサイクルで診療が進むのが理想的だ。

しかし理想的というだけあってそうは問屋が卸さない。

自分のかつての勤務していた病院の一日を紹介する。

・わ~、今日は3人も紹介患者さんが来ている。紹介状ではそのうち2人は今週中に入院させないと治療が間に合わないかもしれない。この外来中にある程度インフォームド・コンセントもしておかないといけないから3人で90分は必要だ。とりあえず検査のオーダー出しておいて、説明は午後まで待ってもらおう。

・あれ?、Aさんのこの前のCTでは腫瘍が増大しているし、骨転移も出現している。今日の化学療法は中止だ。本人の状況をきいて、MRI予約して、今日のうちに整形外科コンサルトしよう。しかし治療法変更の説明に時間とらなきゃ。

・外来看護師が「Bさんの家族から電話で、抗がん剤点滴8日目ですけど本人が全く食欲無くて高熱も出ているらしいです」
「脱水と感染があるかもしれないから、今からすぐ当院受診して血液検査を受けてと伝えて」

・病棟看護師から「Cさんが飲み薬を外泊の時に家に忘れてきたのでちょっと処方してくれませんか」
「え~?電子カルテで一応処方しとくけど、間に合わないので昼の分はもう飲まなくていいと言っておいて、あとで説明するから」

とまあ、最初から波乱が続くのは日常茶飯事。診察予約時間は当然遅れていく。

・研修医が入院患者さんの抗がん剤点滴ルートがどうしても入らないと言えば、病棟に飛んでいって替わりに針を刺し、ついでに抗がん剤が漏れた場合の緊急処置法も簡単に解説。

・看護師が「Dさんが診察はまだかと受付で苦情が出ているですけど...」「もう2時間遅れているからなあ、ごめん後20分待ってと言っておいて、その後の患者さん達にもさらに遅れると言っておいて」

患者さんは診察が遅れても主治医にあまり文句は言わないが、窓口の看護師にはくってかかったり、怒鳴ったりするので、そのことも考えておいて上げないと士気に関わる。

・朝から8時間続けて外来診察続けて、夕方にようやくめどがついたかなというときにまた電話。
胃がんで腸閉塞の在宅高カロリー輸液+外来化学療法をやっている患者さんの家族からで、PTEG(首の皮膚から食道ー胃にチューブを入れて逆流する胆汁を排液する管)のチューブが抜けかけているとのこと。

しかし今から○○夜間急病センター当直に行かないといけない。
入れ替えできる医師がもう他にいないし、やむを得ないのでその患者さんに無理を言ってその急病センターまで来てもらい、そこのレントゲン透視を借りて入れ替えしよう....

こんな感じで急変時や予想外の対応を迫られることが珍しくない。
勤務時間は過ぎましたのでと止めるわけにはいかないし、最後まで責任持ってやるのが当然という中では、高級ホテルのドアマンのように率先してサービスする余力を作れないのが現状だ。

大学病院でやり手の中堅以上の医師が患者対応が大雑多だったのに、開業が決まった途端、とても人当たりの良い先生に変わったと言う話もよくきく。

開業医は患者さんを集めないと経営が成り立たないので、客商売という意識が働くからだ。

しかし開業医ではどんなに愛想がよくても患者さんの急変や時間外の対応ができないため、入院ベッドを持った大きい病院に頼るしかない。

そこで働く勤務医は当然予定外の対応を迫られるが、その分の見返りはほとんど無い。

だから疲れてやめて開業するという悪循環がある。

この回答はもう一回続きます。

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