甲子園出場の常連校などは、部員が寮生活するケースが多い。しかし、履正社の野球部には寮がない。松平一彦部長は「寮があった方が、良い選手が遠方からも集まるかもしれないが、逆に寮がないからうちに来たいという生徒もいる」と話す。最近では河内長野市や大阪狭山市など通学に1時間半ほどかかる部員が多くなっている。
大阪狭山市に住む宮崎新選手(1年)は、通学に約1時間半かかる。練習が終わって家に帰ると夜10時半ごろ。でも、宮崎選手は「自分のプライベートな時間が持てない寮暮らしは嫌だった」と話す。帰宅後も必ずバッティング練習を約30分する。寮生活とは違い、帰宅後は監督の目も行き届かない。重要なのは、選手個人の自主的な努力だ。
岡田龍生監督は「野球で成功する選手はひと握り、たとえ成功したとしてもいずれは引退の時期がくる。社会に出ても通用する人間を、野球を通じて育てたい」と話し、「自助力」をキーワードに挙げる。自分で意欲を持ち、自分で考え行動することを大切にしている。
練習メニューでも監督が全て決めるのではなく、生徒に「今日はシートノックするのか?」などと問いかけ、今のチームにとってどんな練習が必要なのかを選手たちで考えさせる。冬に行う個別の面談では、生徒に現在での課題を提示する。その後、どのように克服していくかは生徒次第だ。
練習の最後に行う300メートルのインターバル走。40秒間隔で10~15本行う。そこでは、生徒自らが目標タイムを設定。松平部長は「自分で設定するタイムなので、楽しようと思えば楽できる」と明かす。しかし、「はじめは楽しようとする選手もいたが、甲子園出場が決まって、『ここで頑張らずにどこで頑張るんだ』と自分を追い込む選手が多くなった」と部員らの成長に目を細めた。【宮武祐希】
毎日新聞 2012年2月9日 地方版