東京湾の海底で、放射性セシウムが深さ20センチ以上の泥まで達していることが近畿大の調査でわかった。地上の土壌では5センチ以内に9割以上とどまるが、海底では逆に深い方が濃くなる場所もあった。
セシウムを含む海底の泥を食べた生物が、泥の中に排泄(はいせつ)するためとみられる。山崎秀夫教授(環境解析学)は「海洋汚染への影響を考えると、深く埋まるのが早まるのはいいことだ」としている。
山崎教授は昨年8月、東京湾の荒川河口付近の4カ所で海底の泥を掘って調べた結果、放射性セシウムが深さ24〜26センチのところでも確認された。別の場所では12〜14センチでの濃度が最も高かった。セシウムはいずれも東京電力福島第一原発から出たとみられる。
セシウム量を1平方メートルあたりに換算すると、最大1万8242ベクレル。琵琶湖の泥で比べると、大気核実験で注ぎ込んだ量が最も多かった年の25倍で、地表での除染の目安の毎時0.23マイクロシーベルトの3割弱という。
東京湾は泥の中にすむ底生生物が多い。海底表面の泥を食べて排泄物を泥の中に放出することで、セシウムが深いところに行くと山崎教授はみている。
測定地点では泥が年間1〜2センチずつ積もるため、汚染物質が20センチ以上の深さまで埋まるには通常なら十数年かかる。海底では、河川などから流入するセシウムの量が多く、山崎教授は「そのピークは1、2年後になるだろう」と話す。
セシウムは泥と非常に強く結びついているため、動植物の体には吸収されにくい。山崎教授は「魚からセシウムが検出される原発近海は水に溶けたセシウムが直接流れ込んだとみられ、東京湾とは汚染の状況が違うのだろう」としている。(鍛治信太郎)