今年10月からNHKの受信料が、実質的には放送開始以来、初めて値下げされる。だがその下げ額は、口座振替やクレジットカード払いの利用者が月額120円、振り込み利用者で同70円と、受信料の約7%とかなり控えめだ(2ヵ月払いの場合)。
平成22年度のNHKの決算書によると、事業収入6839億円に対し事業支出は6801億円。事業支出のうち、国内放送費が2749億円、国際放送費が127億円となっている。作家の三橋貴明氏は、ここで徹底的なコストカットをすれば、もっと受信料が値下げできると次のように提案する。
「無駄な番組を作らなければ経費削減になる。公共放送として最低限必要なジャンルに特化するわけです。報道に関しては、震災や災害報道もそうですが、政府の監視役としての立場を明確にすることで非常に価値も高まる。そもそも、NHKがドラマやバラエティ番組をあそこまで多く制作する必要があるか甚だ疑問です。広告ビジネスの崩壊で苦しんでいる民放を横目に、潤沢な受信料で民放と見まがうような番組を作るのはおかしな話。あれこそ民業圧迫です。報道、教育、福祉に特化した番組作りを徹底すれば、予算だって5分の1程度、年間の事業支出は1370億円程度に抑えられます」(三橋氏)
NHKの試算では、受信契約対象数は世帯契約で4456万件(平成22年度末)、事業所契約で336万件(同)。合計4792万件となっている。つまり、三橋氏が算出した年間事業支出(1370億円)を契約件数(4790万件)で割り、さらに月割りにすると、月額受信料は「約240円」となる。
「この額なら、皆さん納得して払うんじゃないでしょうか」と三橋氏。だが、スポーツ中継や大河ドラマも見たいという視聴者も多いだろう。これには、2005年に現職でありながらNHKを内部告発したジャーナリスト・立花孝志氏がこう補足する。
「であれば、NHKは報道だけで十分という層と、それ以外のエンタメ番組も見たい層のそれぞれに料金プランを用意すればいい。条件をつけてスクランブルをかけるのです。全額支払った人にだけすべての番組を見せる。別に全部は見たくないという人にはスクランブルをかけて、報道など一部の番組だけ視聴できるようにする。それで最低限の金額、例えば240円だけ徴収すればいい」
昨今、受信料の不払いが問題となっているが、このプランなら現在より徴収率が上がることは間違いない。もし、受信料収入が総額で下がったならば、余分な支出を抑えコストカットに努めるのが公共放送としての使命だろう。
(取材/コバタカヒト)