世間からのはぐれ者が大勢いる親不孝通り。暴力、薬の売買、窃盗など法に触れることが横行している地域。
「た、助けてくれぇ……」
顔面蒼白で救いを求める声を出す男の周りには仲間と思われる者たちが倒れている。あるものは腕の骨を折られ、あるものは顔の一部が陥没し、またあるものは恐怖のあまり白髪化している。
「…………」
男の声など気にせず腕を振りかぶり容赦なく叩きこんでいく。血が飛び散ろうと相手の骨が折れようと一切手を緩めない。
「その辺にしておいたらどうですか?もう行きますよ」
突如物陰からこの場に似合つかわしくない落ちついた声が響いた。
「……お前か。今行く」
落ちついた声の主に返事すると殴っていた手を止め振り返り闇に溶け込むようにこの場を後にした。
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――1週間程前
「今までどうしてたんだ?」
あの別れの日から十数年、何の音沙汰もなかった友人と出会えた百代は率直に聞いた。
「んーそうだね、どこから話そうか」
伊織は百代に離れ離れになってからあったことを思い出話も混ぜつつ話した。
「そうか。だからそんなに強くなっていたんだな」
実際に戦ってはいないが百代には伊織のおおよその強さを感じ取ることができていた。
「まだまだだけどね」
人懐っこい笑顔で答えるとポケットの中からあるものを取り出す伊織。
「まだ持っていたのか」
「うん。これは大切なモノだし、僕にとっての誓いでもあるんだ」
伊織の手のなかにあったのはボロボロになった帯。別れる際、一向に泣きやまない伊織に百代が渡したものだった。
この後、二人は小さい頃の話を時に笑い、時に恥じらいながらも話していた。
「今日はもう遅いから川神院に泊まっていくといい。じじいには私から話をつけておく」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
「あぁ、じゃあ帰るぞ」
七浜市から川神市もでの道程を笑いながら歩く二人の姿があった。
翌日の朝
「ふわぁ……眠い」
朝日が昇りかけている頃に目を覚ました伊織は、日課である鍛錬に向かおうと眠気眼を擦りながら長年愛用している道着に袖を通し外に出た。
外はまだ気温が上がっておらずまだ肌寒く、起きたての体には丁度いい眠気覚ましになる。
ストレッチで体をほぐしランニングをしに行こうと川神院の門をくぐったところである人物に出会った。
「おはよう伊織君」
「おはよう一子ちゃん。走りに行くんだったら僕も一緒にいいかな?」
「うん。でも結構走るけど大丈夫?」
「大丈夫だよ。僕に構わず自分のペースで走ってね」
一子は頷くと先に走りだした。それに続くように伊織が走りだす。
七浜辺りまで走ったあと折り返してきた二人は多摩川の河川敷で休憩していた。
「いつもこれくらい走ってくるの?」
目の前で体を動かし続ける一子に声をかける伊織。
「うん。目標があるから、そのために努力しないといけないの」
「目標?よかったら教えてくれないかな」
「川神院の師範代になってお姉さまのサポートするの」
一子の言葉を聞いた伊織は微笑んだ。
「そっか。だったら僕応援するよ。何か力になれることがあったら言ってね」
心からの言葉だった。目標は高いがそれに向かってひたむきに努力する一子の姿を見て純粋に応援したくなったから……小さい頃ヒーローに見えた少女に近づくために必死だった自分と同じようにがむしゃらに努力する姿に似ていたから。
「ありがとう。じゃあさっそくいいかな?」
「いいよ。僕にできることなら」
「せやーッ!」
気合の入った大きな声と共に前進する。力強く地面を蹴る脚は先程まで長い距離を走って疲労が溜まっているものとは思えない。
勢いをそのまま拳に乗せ真っすぐに撃ちだす。手加減なんて微塵もなく全力をぶつけるような一撃だった。
「思い切りと踏み込みはいいけど、まだ体重が乗りきってない」
自分に迫ってくる拳を軽く受け流しつつ接近すると、下から掬いあげる形で拳を突き出す。が、その拳は当たることなく相手の顎先数センチの所で止められていた。
「勝負ありだね」
静止したままの状態で声を出したのは伊織だった。真剣にはしているものの本当に攻撃が当たって怪我をしては鍛錬どころではないため寸止めで行なっていた。
「もう一回お願いできるかな」
負けず嫌いな性格と前向きな思考の持ち主である一子は諦めずに繰り返し行なうことで成長する。短時間で彼女のタイプをおおよそ掴んだ伊織は嫌な顔1つせず頷くと元の位置に戻ると構える。伊織には付き合っているという感覚はなかった。
「何度でも」
始まりました第一部!
書き直していたものがついに無くなりました
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