更新が遅くなりスミマセン…。
内容に不安もありますがどうぞ。
川神院道場内は静寂につつまれていた。門下生・修行僧たちが見つめる道場の中心には二人の武人が向かい合って立っている。陸奥圓明流-陸奥伊織と川神院師範代-ルー・イーの二人だ。
開始の合図がされ両者は構えをとると、相手の出方を窺うようにピクリとも動かなくなった。見ている者にもわかるくらいの緊張感が場を支配している。
「こうして対峙すると改めてルーさん、貴方の強さを実感します」
「ワタシにもキミの強さがわかるヨ。本当に別人みたいだネ」
拳を一度も交えていない状態でも互いに対峙している相手の強さを察している。だからこそ安易に仕掛けることができずに、時間だけが過ぎているのだった。
先程まで汗1つ掻いていなかった伊織の額には僅かだが汗が滲み出てきている。勇敢なのか、はたまた若さによる無謀なのかわからないが先に動いたのは伊織。
「陸奥伊織!参ります!」
奮い立たせるために己の名を呟きルーとの間合いを詰める。試合が動いた瞬間だった。
持ち前のスピードを生かしルーに詰め寄ると右の上段廻し蹴りを放った。それと同時に放たれる逆足での廻し蹴り。《双龍脚》二本の脚を龍に例え左右同時に廻し蹴りと言う名の顎で相手を食い破る。
「その技は一度見せてもらったヨ!来るのが分かっていれば避けるのも容易い」
ルーは上半身を後方に逸らすことでいとも簡単に伊織の蹴りを避けた。
「そうみたいですね」
伊織がそう言うのとほぼ同時にルーは動いていた。自らの拳を鉄槌に変え、脚を鎌に変え伊織に襲いかかっていく。
嵐のような勢いの攻撃だったが伊織はその1つ1つを完璧に見切り、難なく避け続けた。
川神院に訪れる前に見せた舞いのような動きをルー相手にも伊織はしている。
「単純な攻撃は僕には当たりませんよ」
眼前を掠めるように過ぎゆく蹴りを臆することなく見つめながら言葉を紡ぐ伊織。
逃げ続ける獲物を狩るようにルーのギアは上がり攻撃の速度が増していく。
伊織は徐々に余裕が無くなっていきルーの攻撃は掠めるようになる。今も頭髪を掠め焦げたような匂いに顔を顰めている。
「遂に捉えたヨ!」
伊織の一瞬の隙を見逃さずルーは師範代に昇り詰める為に振り続けた拳を伊織の体に叩きつけた。
伊織の体に拳が当たるとそのまま追い打ちをかけるように蹴りを放つ。
流れるような攻撃が直撃した伊織の体は空中に放り出され真横に吹っ飛ばされていった。
見ている者たちからは感嘆の声があげられている。それもそのはず、師範代の肩書を持つルーの攻撃が直撃したのだ。骨折していても不思議ではない。いや、骨折で済めば良い方……。
「いつまで、寝ているつもりだい?」
床に仰向けになりながら寝そべる伊織に対しルーは声をかけた。門下生たちには、その言葉の意図が理解できない。
「バレていましたか」
何事もなかったかのようにムクリと伊織は立ち上がった。
「やはりネ。当たった時の感触がほとんどなかったヨ」
伊織が昔、苦戦を強いられていた技だった。
「陸奥圓明流-浮身」
「それは防御用の技だネ?力の掛かる方向に合わせ跳び、受けた際の攻撃の衝撃を逃がす」
ルーの攻撃を完璧に見切れる伊織だからこそできたことだった。
「全てお見通しのようですね」
「ようやく陸奥の技を引っ張りだすことができたようだ」
そう川神院に訪れてから伊織が始めて陸奥圓明流を使ったのだ。
「それでも…わかっただけでは破れない」
「そうでもないネ。対抗策はあるヨ!!ホォォ…アタァッ!!」
ルーは気合を入れると伊織に襲いかかった。
門下生たちには、ルーの拳が…脚が…まるで消えたかのように感じていた。実際に空気を切り裂きながら猛威を振るうルーの攻撃はほとんど見えない。
先程以上に速さを増した攻撃は伊織の体を捉える。
だがその攻撃すら伊織は完璧に見切ると浮身で防ぐ。胴を狙った蹴りに合わせ左に跳んでいく。
「甘いネ!まだヨ!!!」
ルーは空中を飛ぶ伊織に接近すると体を掴みそのまま地面に叩きつけた。
「がはっ……!!」
勢いよく床に衝突する伊織の体……。
「これが1つ目『衝撃を逃がす際に必要な空間を与えない』」
ルーの言う通り浮身には弱点があった。
今度こそ勝敗は決したように見えた。
が、伊織は体の痛みを訴える部分を押さえながら立ち上がると再び構えをとった。
「僕は……」
“陸奥圓明流”を受け継ぐ者として、自分を鍛えてくれた祖父への感謝を示すようにして、そしてなによりも幼い日に出会った少女のように強くなると誓ったから……
「絶対に負けられない!!陸奥圓明流-陸奥伊織、参る!!!!」
口上に“陸奥圓明流”と付けたのは単にカッコつけたのではなく、今から人殺しの技を使うという意味だった。
一気に変わった伊織の雰囲気を察したルーは警戒を強めた。いつ、どこからでも来てもいいような柔軟な構えをとっている。
そんなルーに先程までとはまるで違う速度で肉薄していく伊織。詰め寄った伊織は急所目掛け次々に攻撃を繰り出していった。
「スピードが上がったところで、どうということはないネ!」
そう言うルーは伊織の攻撃を受け流している。それでも伊織は攻撃の手を緩めずに、勢いを増してルーに襲いかかる。
1つ1つの攻撃の威力が上がっていても、繊細さが欠けていては当たらない。受け流しつつもルーは伊織に接近していた。
「捕まえたヨ!冷静になりたまえ!!」
全てを薙ぎ倒す暴風のような攻撃を仕掛けてくる伊織の大振りのパンチに合わせカウンター気味に拳を放った。
「………!!」
ルーの放ったカウンターは当たっていたが、伊織はルーの腕が伸びきる前に額で受け止めていた。
伊織が浮身を使うと思い込んでいて虚を衝かれたルーは一度距離を取る為に後方へと下がろうとしたが、それよりも速く伊織はルーに追いすがった。
ルーは危険を感じた。死の恐怖を……
伊織の纏う殺気はルー・イーが今まで経験したどんなモノより濃密で莫大な殺気だった。
ルーは川神院師範代である前に一人の武人。恐怖に打ち負けるわけにはいかなかった。
自らを奮い立たせる為、誇りを示す為に拳を放った。一秒の間にいくつも放たれる拳は弾幕の如く展開された。
だが、そんな拳の壁の僅かな隙間を縫うようにして伊織はルーの体に接近していく。
自分の攻撃が届く距離。それは相手の攻撃も届く距離。比較的体の小さな伊織の射程は短く相手の懐に飛び込まなくてはならない。だが一度懐に入ってしまえば小柄な伊織には有利な状況を作りだすことができる。
そして遂にルーは接近を許してしまう。懐に飛び込まれたルーは伊織の頭に肘を落とした。
次の瞬間体勢が崩れたのはルーだった。
「(なんだコレは?一センチもなかったはずなのに……)」
ルーは必死にダメージを堪えパンチを繰り出す。 それはルーだったからこそ耐えきれた。
しかしその拳は力無く空を切った。
いや、受け流されていた。
伊織はパンチを受け流しつつ、受け流した腕に自らの腕を巻きつけていた。残るもう片方の腕でルーの襟を掴むと投げた。
バキィィィ!!!
その直後聞こえたのは、骨の音だった。もちろん投げられたルーの体からの………。
「陸奥圓明流-―蔓落とし(かずらおとし)」
道場に響くのは伊織の声だけで、門下生・修行僧の誰もが声を失った。中には信じられないものを見た様子で目を見開いていた。
「そこまで!勝者・“陸奥”伊織!!」
静寂を破ったのは鉄心の声。
「ありがとうございました!」
礼をすると伊織は身に纏う闘気を納めた。
「痛てて、アリガトウございました」
「ルーよ気を使わなかったとしても、こっ酷くやられたのう」
「えぇ、最後は関節が極められていて逃れられずそのまま投げられてしまいました。それにその前のアレをくらってしまったのはワタシのミスです。まだまだ修行をしなければ」
ルーは試合の評価をすると、折れた腕に気を集め自然治癒能力を高めた。
「ルーさん大丈夫ですか?」
伊織は自分が折ったのを気にしてルーのもとへと駆け寄っていった。
「大丈夫だヨ伊織君。これでも川神院師範代、これくらいの骨折はどうということはないネ」
ルーの言葉を聞いて安心したのかもう一度頭を深々と下げた。
「今日はありがとうございました!」
「伊織君頭を上げてくれ。ワタシの方こそアリガトウ。いい経験をさせてもらったヨ」
そう言いつつルーは折れている腕とは逆の腕で伊織の頭を撫でた。
「子供扱いしないでくださいッ!!」
「ハハハ、やはりキミは戦っている時といない時はまるで別人みたいだネ」
ルーの言う通りに伊織は試合中でこそ一人の武人として見えるが、終わってしまえば年相応もしくは年以下に見える。
「うぅ…ほっといてください!」
「今日はこれまでじゃな。伊織君今日は泊まっていきなさい」
「よそ者の僕がいいのですか?」
「構わんよ。頼んだのは此方じゃし、それにモモの客人じゃ。歓迎しよう」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせてもらいます」
「夕食までゆっくりするとええ。門下生に部屋まで案内させよう」
こうして“陸奥”伊織として思い出の地-川神市に戻ってきてから、ゆっくりできたのは本日四度目の試合を終えてからだった。
陸奥圓明流の名を再び世に知らしめる発端の日でもあった。
描写の悪さに拍車がかかりましたが、なんちゃって戦闘回も今回の話で一応終了です。
感想等ばっちこーい!
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。