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なんちゃって戦闘回…。

プロローグ
少年の実力
 ルーに連れて来られた数人の門下生・修行僧は表情を曇らせた。


「ルー師範代!!このような小さき者と戦えと仰るのですか?」

 
 その中の一人がみなの思いを代表するように口を開きそう言った。それもそうだろう、彼らの目の前にいる伊織の身長は160㎝程しかなくお世辞にも普通とは言えない小柄な体をしていた。童顔であることも合わさって見る人によっては小学生高学年~中学生くらいにしか見えない。


「ワタシもさっきは思ったことだが、人を見た目で判断するのはよくないことだヨ。彼は強い、油断していると足元をすくわれてしまうヨ?」


 ただ彼らの思いとは裏腹に伊織には実力がある。


「師範代がそこまで仰るならやりましょう」


 ルーの言葉を聞いた門下生・修行僧は渋々といった様子で了承した。


「……怪我をさせてしまう可能性がありますが、それでも構いませんか?」

「構わんよ。その時は川神院が全責任をもって彼の面倒をみよう」


 まだ口を閉じない門下生たちを黙らせるように、これ以上相手(伊織)をバカにさせないために鉄心が口を挟んだ。


「すまないネ伊織君。彼らを許してやってほしい」

「許すもなにも、気にしていませんから大丈夫ですよ」


 自分と戦わされる門下生たちの気持ちがわかるのか、伊織は本当に気にしていない様子でルーの言葉に返事をするとストレッチをし始めた。最後に笑いながら「それに慣れてます」と付け加えた。

 ストレッチが終わり道場の真ん中に立つ少年からは、先程までの子供のような雰囲気は無くなっていた。そこには一人の武道家……いや、陸奥圓明流第41代伝承者―“陸奥”伊織がその小さな体からは似合わない量の闘気を出しながら立っている。


「ここまで雰囲気が変わるとは別人じゃな。実に楽しみじゃのう」

「ええ、やはり彼は強い。体から出る気の量が凄い」


 鉄心とルーは互いに思ったことをそのまま口にする。


「それでは試合をはじめるヨ。審判はワタシが務めさせてもらう。両者共に正々堂々と戦うように…では始めッッッ!!!」


 ルーの開始の合図を聞くと伊織は礼をし構えをとった。


「陸奥伊織です。よろしくお願いします!」

「よろしく頼むよ。……はぁっ!!」


 門下生の男はそう言うと力任せに攻撃を仕掛けた。男の身長はおよそ190㎝、対する伊織は160㎝前後。身長差は30㎝もあり上から振り下ろすような正拳突きを打ち出している。体格の差に大きなアドバンテージのある伊織に対して力で押せば叩き潰せるだろうと考えた行動だった。

 周囲の人間から見れば小柄な伊織が押されているように見えるが実は違っていた。


「(くっ!なんだコイツは!?まるで…岩のようだッッ……)」


 実際に押されているのは門下生で、しっかりとガードを固め攻撃を防ぎながらも伊織は足を前に出し前進している。手を出し攻めているのは門下生だが、ジリジリと後退を余儀なくされていた。

 自分が後退していることに焦った門下生は力を込めようとし大きく振りかぶってしまった。

 戦闘が開始されてから一番大きなモーションになり、それを伊織が見逃すわけもなく一瞬で間合いを詰める。


「え?……」


 それ以上の言葉は聞こえなかった。伊織は門下生に接近すると顔に目掛け下から突き上げるように拳を出していた。

 伊織の攻撃が直撃した門下生は脳を縦に揺らされ気を失いその場に倒れ込んだ。


「そこまで!勝者・陸奥伊織!!」


 冷たい道場の床に寝そべるようにして倒れる門下生を見てルーが試合の終了を告げる。


「ありがとうございました!」


 大きな声を出し礼をした伊織を周囲にいる門下生たちはどよめき、驚愕の表情で見つめていた。

 こちら(門下生)が負けたことにではなく、内容が内容だったためである。

 体格に恵まれていない伊織よりも30㎝以上背の高い男の…それも門下生・修行僧の中でも力<パワー>のある男の打撃を受けつつも全く動じることのない気持ち<ハート>。防ぎきる硬い守り。前進しながら隙を見つけるなり一瞬で間合いを詰めた脚力。勝負を終わらせた一撃。

 すべてにおいて予想を上回っていた伊織の実力を目の当たりにした、門下生たちは自分たちの考えが甘かったことに気付き認識を改めさせられた。


「続けて試合を始めるけどいいかな?」

「ええ、大丈夫です」


 そう答えた伊織は汗1つ掻いていなかった。


「では、次の試合をはじめるヨ!両者前に出て…始めッッッ!!!」

「陸奥伊織です。よろしくお願いします」


 先程と同じように礼をすると構える。


「よろしく」


 伊織と対峙している男も構えをとった。今回の対戦相手は伊織の出方を見るように、守りを主体とした構え。不用意に攻めてカウンターをもらってしまい倒れた門下生を見ていたためである。


「これでは勝敗がつきませんね……僕からいかせていただきます!」

 
 男の思惑を見抜いていた伊織だったが、前進し間合いを詰め攻勢にうって出た。
小さな体からは正拳突き・廻し蹴りなどの様々な打撃を相手のガードする腕の上から叩きつけていく。


「(ぐぅ…やはり攻撃が重い……だが)」


 自分に襲いかかってくる攻撃をガードをさらに固め耐えた抜いていた。そこに伊織の頭部を狙った上段廻し蹴りが迫る。


「そこッッ!!!!」


 門下生は自分を守る腕を1つにし、左から迫る廻し蹴りを間合いを詰めながら受け止め、カウンター気味に正拳突きを叩きつけようとしていた。

 ガードする左腕に伊織の右脚が触れる同時にことは起こった。

 男の頭部に蹴りが突き刺さっていた。それも右脚の蹴りではなく、左脚での蹴りが……。


「バカ、なっ……」


 始めの蹴りとは違い逆方向からの蹴り、意識の外からの攻撃を受けてしまった門下生は崩れ落ちた。


「…そこまで!勝者・陸奥伊織!!」


コールの後、道場内は静まりかえっていた。

 一試合目の門下生とは違い、今回の男は油断することなく試合に挑んだ。だが結果は見ての通り、手も足も出ないまま何が起きたのかわからないまま勝敗は決してしまった。それは彼らの心を揺るがせた。

 これまでの試合を黙って見ていた鉄心が口を開いた。


「少しばかり休憩を挟んでもよいかの?」

「僕は構いません。緊張していたのでトイレに行きたかったんですよ」

「では10分間の休憩の後、試合を再開する」




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 休憩に入ると伊織は急ぎ足でトイレに向かっていった。


「試合中とは、まるで別人ですネ」


 伊織の後ろ姿を眺めながら思ったことを口にする。


「そうじゃのう。…ルーよ、あの蹴り見えたかの?」


 鉄心は一度微笑んだあと、真剣な表情に切り替えると尋ねた。


「ハイ。あの廻し蹴りを見切れた者は、この中でワタシと総代の二人だけでしょう」

「廻し蹴りがくると思った瞬間、逆方向からもう一つの廻し蹴りが襲う。それも左右同時にな」

「あれが陸奥の技なのでしょうカ?」

「違いますよ」


 鉄心とルーの会話にトイレから戻ってきた伊織が口を挟んだ。


「ではあの技は伊織君のオリジナルかい?」

「あれは修業中にじぃちゃんが使ったことのある技なんです。昔、自分と戦ったことのある人が得意といていたものらしいです」


 伊織はルーの質問に包み隠さず答えていく。


「二回の試合をおこなったのじゃが、未だに陸奥の技を出していないとはのう…恥ずかしいかぎりじゃ」

「トップクラスの武道家ではありませんが、やられたのは川神院の門下生。そこらの武道家よりは強いはずなのですがネ」


 鉄心は川神院総代として、ルーは川神院師範代として目の当たりにした現状を嘆いていた。


「どうじゃルー、お前さんが戦ってみるかの?」

「よろしいのですカ?」

「伊織君よいかのう?」

「僕としては師範代のルーさんと戦えるのは光栄なことです。是非お願いします!」


 鉄心の提案を快く引き受けた伊織は気を引き締めた。試合中と同じ表情になっている。


「決まったの。それでは次の試合はわしが審判をしよう」


 突然決まった試合に道場内にいる門下生・修行僧の間に衝撃が走った。

 
「よろしくお願いしますルーさん!!」

「ワタシのこそヨロシク頼むよ!」


 伊織とルーは互いに礼をした。


「では始めようかの。いざ尋常にはじめいっ!!」




『陸奥伊織 対 ルー・イー
 これまでの試合とは違う内容の戦いが見られるだろう』
次の更新は明日以降になります
すみません……。

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