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食品の放射能規制:新基準、海外より厳しく 現行の値「緩い」は誤解 改定後はより子供に配慮

 食品に含まれる放射性物質の規制値について、厚生労働省は年内に新たな基準を設ける。日本の規制値は海外とどう異なるのか。規制値をつくる際の条件や基本的な考え方を、解説した。【小島正美】

 Q 日本の暫定規制値は緩いのですか。

 A 決して緩いわけではありません。いま問題になっている放射性セシウムの暫定規制値は、野菜や穀類などの食品で1キロあたり500ベクレルなのに対し、欧州連合(EU)は1250ベクレル、米国は1200ベクレル、国際機関のコーデックス委員会は1000ベクレルです。

 Q でも、日本は子供に配慮していないのでは?

 A 誤解です。暫定規制値は乳幼児への影響も考慮されています。日本は年間被ばく限度を5ミリシーベルトとし、五つの食品群に1ミリシーベルトを割り当て、各食品群で乳幼児がセシウムで汚染された食品を食べ続けても、内部被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下になるよう設定されています。たとえば乳製品の場合、乳児は1キロあたり270ベクレルの規制値でも1ミリシーベルト以下になりますが、実際はより安全になるように、200ベクレルとされています。

 Q 新しい規制値はどうなるのですか。

 A 年間被ばく限度が5ミリシーベルトではなく、1ミリシーベルトに決められます。その根拠として、小宮山洋子厚労相はコーデックス委員会の1ミリシーベルトを挙げています。規制値は間違いなく、いま以上に厳しくなります。

 Q でも、コーデックスの一般食品の規制値は日本より高い。なぜですか。

 A そこは大事なポイントです。汚染食品の割合をどう見積もるかが、違うのです。チェルノブイリ事故後に基準を作ったコーデックスは、食品の10%が汚染されているという仮定です。EUも同じ考え方です。米国は被ばく限度を年5ミリシーベルトとしながら、食品の30%が汚染されているとして1200ベクレルとしました。日本の暫定規制値は、汚染食品の割合を50%と仮定しています。新規制値作りにあたっては、厚労省が汚染割合をどう仮定するかで大きく変わります。

 Q 新たな規制値の特徴は?

 A 規制対象の食品区分が▽飲料水▽牛乳▽一般食品▽乳児用食品の四つになります。被ばく限度の評価にあたっては、年齢層を「1歳未満」「1~6歳」「7~12歳」「13~18歳」「19歳以上」の五つに分け、その最も厳しい数値を全年齢に適用して新規制値とする方針です。さらに、乳児用食品は大人とは別の規制値を設けます。食品安全委員会の「子供はより影響を受けやすい」という答申に従ったものです。新規制値が今の5分の1~10分の1ほどになれば、世界でも相当に厳しい規制値となります。

 Q チェルノブイリ事故にあったベラルーシの規制値は厳しいと聞いていますが……。

 A 確かにパンや野菜の基準値は1キロあたり40ベクレルです。しかし、ベラルーシは事故のあった1年目(86年)は被ばく限度を年間100ミリシーベルトとし、92年に1ミリシーベルトに引き下げたのです。最初から厳しかったのではありません。

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 ◇暫定規制値の決まり方

被                     1ミリシーベルト以内に収まる上限値

ば5          食品群         成人   幼児   乳児     最小値   規制値

くミ→1ミリシーベルト 飲料水        201  421  228     201 → 200

限リ→1ミリシーベルト 牛乳・乳製品    1660  843  270     270 → 200

度シ→1ミリシーベルト 野菜類        554 1686 1540     554 → 500

 ー→1ミリシーベルト 穀類        1110 3830 2940    1110 → 500

 ベ→1ミリシーベルト 肉・魚・卵・その他  664 4010 3234     664 → 500

 ル

 ト

 *数値は1キロ当たりのベクレル数

毎日新聞 2011年12月19日 東京朝刊

 

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