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【静岡】

震災がれき、県内到着 16日から島田で試験焼却

震災がれきを乗せたコンテナの線量率を測定する関係者=15日午前0時26分、静岡市のJR静岡貨物駅で(山田英二撮影)

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 震災がれき受け入れ問題で、島田市で試験焼却(溶融)される岩手県山田町のがれきを積んだ鉄道貨物のコンテナが14日深夜、静岡市のJR静岡貨物駅に到着した。静岡県がコンテナの空間線量率を測定した結果、県が定めた基準値をクリアした。

 がれきは、コンテナ5台に詰め込まれた柱材や角材の木材チップ計10トン。14日午後10時半ごろ、同駅に到着し、静岡県から委託された検査機関の職員が翌15日午前0時20分ごろからコンテナ左右の空間線量率を測定。毎時0・04〜0・05マイクロシーベルトで、いずれも周囲の空間線量率(毎時0・06マイクロシーベルト)の3倍未満という県の基準を満たした。

 県は15日早朝から順次トラックに積み替え、島田市伊太のごみ溶融処理施設「田代環境プラザ」に運び込む。島田市は16、17の両日、試験溶融する。結果は3月24日に最終的に公表されるが、確認できたものから速報値として公表するという。

 今月7、8の両日、岩手県は山田町の仮置き場で、がれきの山の周囲の空間線量率と放射能濃度を測定したほか、コンテナ積み込み時にがれきが放つ遮蔽(しゃへい)線量率とコンテナ左右の空間線量率を測定。いずれも静岡県が定めた受け入れ基準をクリアしたため、10、11の両日、山田町から搬出された。

岩手・山田町の憩いの場、今は仮置き場

鯨と海の科学館の隣に集められた被災がれき。震災前は花が咲き乱れていた=岩手県山田町船越地区の仮置き場で

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 島田市が被災がれきの受け入れを検討する岩手県山田町。がれきの仮置き場は震災前、キャンプ場や科学館などが集まる観光拠点だった。住民たちは高く積み上がるがれきに心を痛め、一刻も早い観光シンボルの復活を願っている。

 カキやワカメの養殖いかだが浮かぶ雄大な海から陸に目をやると、18ヘクタールの敷地に集まった約36万トンのがれきが目に入る。空っ風が吹くたびに、粉じんが高く舞い上がる。

 「この場所は震災前、みんなの憩いの場所だったんだよ」。同町の主婦鈴木愛子さん(61)が思い返す。

 震災前は船越家族旅行村と呼ばれるキャンプやバーベキューを楽しむ施設で、サクラやスイセン、アヤメなど四季折々の花が咲き乱れていた。隣には町と海との深い関わりを伝える鯨と海の科学館がある。しかし今は花の面影はなく、津波で破壊された科学館は廃虚と化している。

 鈴木さんは震災前、ウニの水産加工業者だった。震災の日は津波警報を知り慌てて従業員を帰宅させ、夫と祖母、愛犬を連れて高台に避難した。命は取り留めたが、工場と家は跡形もなく流された。その後4日間、川の水でのどを潤しながら、凍える車中で助けを待ち続けた。

 「津波を思い出すから、がれき置き場にはいまだに近寄れない」という鈴木さん。「なりたくてこうなったわけじゃない。島田市を起点に全国での受け入れが進んでほしい。次の世代の子どもたちにも、きれいに咲く花を見せたい」と思っている。 (福田大展)

 

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