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“現代の徐福”の船出(12年2月16日) | |
「人類の歴史を1年間に置き換えるとします。“飽食の時代”が始まったのは、大みそかの23時56分51秒ごろにすぎません。つまり、私たちの遺伝子はまだ、飽食になじんでいないのです」-。今春、退官する佐賀大農学部の柳田晃良教授(65)の最終講義の一こまだ◆私たちの祖先は飢えに備えてエネルギーを効率的に使う「節約遺伝子」を獲得した。ところが、飽食の現代では、これが逆効果となり、脂肪がたまる一方だ。メタボリックシンドロームは今や、国民病だ◆そこで、柳田教授は肥満を避けたり、高血圧を抑える成分を食品から見つけ出し、そのメカニズムを明らかにしようと考えた。目をつけたのはタマネギやノリ、茶、大豆、ミカン、レンコン、アスパラ、鶏肉…。どれも代表的な県産品ばかりだ◆例えば、タマネギからは内臓の脂肪量を減らし、動脈硬化の危険因子の働きを低下させる成分を、「ムキタケ」というキノコからは脂肪肝を改善する効果を見つけ出した。既に一部は商品化されている◆退官を迎えて柳田教授は、産学官による新たな研究拠点「徐福フロンティアラボ」を学内に立ちあげた。不老不死の薬を探し求めて佐賀へと渡ってきた「徐福」の名を冠して、人々の健康に貢献しようという心意気だ◆“現代の徐福”の新たな船出に、心が躍らされる。(史) |