第一話
『なぁおい、頼むぜ? あいつに金を返すように言ってやってくれ』
「はぁ……」
川神学園の一年生、直江大和は露骨にため息をついた。
入学してからそろそろ半年。人脈も作れてきたものの、それはまだまだ目標値には達していない。
そんな中での、つい先日に生徒会会長選挙で落選した男――しかもその男、会長にはなれなかったは副会長には就任したらしい――からの要望。
大和は刑部湊斗というその二年生と、ギブアンドテイクの関係を築いている。
理由は簡単。湊斗の持つ人脈を少しでも取り込む為と、一部の趣味の一致である。
まだまだ人脈の形成がイマイチである今、大和としてはこの頼みも引き受けて何とかしなければならないところなのであるが――
「姉さんが素直に聞くとは思えないな……」
もう一度、大和は深く深くため息をついた。
第一話
「うへへはは、あいつが物分りのいい奴で助かったぜ」
「……何ですそのキモい笑い方」
「聞き流せ武蔵よ。今の俺は有頂天だ」
直江大和、なんと信頼できる商売相手だろうか。
たった3日で金を取り戻すとは、さすがデキる男である。ちょっと株上がったなこれは、今度ナニカあったら優先的に協力してやろう。俺は寛大であり恩義も忘れない男だからな。
おっと、今は目の前のイベントに集中しないとな。せっかく金が戻ってきたんだ。しっかりとこっちも楽しんでやらねば元が取れないってものである。
「で、どこいく? 裏スポットから何から、この川神市に関することなら俺は一番くらいに知ってるぞ」
「(一番じゃないんだ……)じゃあ、このプッレーミアムな私にふさわしい――」
「あーはいはい。そんなこったろうと思って考えてあるよ」
「最後まで言わせてくださいよ!」
こいつの言いそうなことは大抵が予想済みなので、昨日の内に考えておいた店へとこいつを案内することにする。
……でもよ、実際の所こいつの方が俺よりも金持ってるよな。絶対に。
プッレーミアムは伊達じゃないって感じに、なかなかの金持ちだしな。俺の家だって金はあるのに管理が厳しすぎて洒落にならない。あぁ羨ましい羨ましい。
「じゃ、行くか」
「ちょっと! 置いてかないでください!」
で、しばらく歩いて目的地到着。
俺が武蔵をどこに連れてきたって? 今は10月、秋なんだぜ?
そんなもん(一応)女の子である武蔵を俺がどこに連れてくかなんかすぐわかるだろ?
ちなみに秋とは俺にとって『食欲の秋』であり『読書の秋』だ。
「はっはっは、どうよこれ」
「さすが先輩! プレミアム! これこそプッレーミアム!」
「そうだろうそうだろう! ふふははははははー! うわーはっはっはっは!」
やってきたのはラ・チッタ・デッラ。
美味しいお菓子やらケーキやらを売ってる店が犇めくスイートスポットである。
そして俺様、武蔵の為にと思って見つけておいたプレミアムサイズなウルトラパフェを売っている店を見つけておいたのである。
なんという優しさ、まさにこれこそ先輩である。
……こういう事を繰り返して武蔵は俺に懐いていったのだが、今を思えばベストな選択だったな。
意外に優秀、それが武蔵小杉。あくまで意外、だが。
「おいしー!」
「うまかろううまかろう、そして俺に感謝しろ」
甘いのがそこまで得意じゃない俺はブラックコーヒーを飲みながら武蔵を眺める。
うーむ、スプーンを盛んに動かしてパクパクとパフェを食う姿は意外に可愛いのかもしれん。さすが意外の武蔵。
だが俺が靡くほどではないな。俺様を惚れさせたければ、今の三倍の萌えをもってこい。
でなければ足りんな。足りぬよ。
「先輩は何か食べないんですか?」
「俺はコレで十分だ。既に知っていると思うが、俺は前のバレンタインで無理をして以来、更に甘いものが嫌いになった。拍車がかかった。もう食いたくない」
「そ、そうですか……(私もあげたのに……)」
チョコなんてもの考えたのはどこの阿呆だと問い詰めたくなるほど最悪な一日だったな、まさしく地獄のバレンタインDAY。
半端にモテる俺も悪いが、ビターでブラックなチョコレートを誰も用意しなかったのは何故なのだ。俺が普段からブラックコーヒーを愛飲しているのは休み時間でわかるだろうがチキショウめ。
おまけにこの武蔵までもが何を勘違いしたのか巨大な……こいつ曰くプレミアムな激甘チョコなんてもんをくれやがるから、食べ物を無駄にしない性格な俺はとんでもない目にあったのだ。
ああ思い出しただけで胸が……胸焼けが……っ!
「さあ食い終わったのなら次だ次!」
「え、ちょ、ちょっと!」
話もそこそこに俺たちは店を後にする。
あぁ、あの甘ったるい匂いには耐え切れなかったのだよ。すまんな武蔵。
そして次の店への移動中。
またもや知り合いに遭遇した。
「おや、そこに見えるは刑部だな?」
「ぬ。お前は京極」
(うわ、プレミアムなイケメンだわ)
こいつはエレガンテクアットロなんていうイケメン四天王に名を連ねてる憎いアンチクショウ、京極彦一とかいう野郎である。
これまた意外に腐れ縁。
小学校中学校高校生とずっと同じクラスとかふざけんな、マジふざけんな。
それでも俺がモテていられたのは、こいつがそういうのに全然興味示さないからだろう。いや、それ以上に俺に魅力があるんだと信じたい。信じていたい。信じるのはいつだって自由。
信じたいが、このイケメン野郎を見ていると絶望感が沸々と……
「ふむ……見るに、先日の会長選の敗北を慰めてもらっているのか」
「ちげーよ馬鹿! このイケメン!」
「先輩、それ褒めてます」
「お前に年下趣味があるとは昔から知ってはいたが、ほどほどにしておく事だ。いつも灰色路線をいっているとはいうが、さすがに手を出すのはお勧めしない」
「余計なお世話だ!」
俺的には、『お前は俺の母ちゃんか!』と言いたくなる様な男である。
昔からの知り合いだから心配であるらしいが……
ありえんだろ。まずありえんだろ。
なんで俺が武蔵相手に欲情せにゃならんのだ。常識的に考えてありえんだろマジで。
いやそりゃさ? 京極の言うとおり、俺は年上よりは年下の方が好きだよ? 若い方がいいに決まってるじゃん?
でもそれはあくまで好みとかであってさ。武蔵に手を出すのはおかしいわけよ。
「そこらへんおわかり? ねぇおわかり?」
「混乱している刑部はさておき……名前は?」
「え? あ、武蔵小杉よ! 来年にはプッレーミアムな一年生として川神学園に入学するわ!」
「つまりは後輩か。こいつの相手は大変だろうが、粘り強く頑張る事だ」
「おいてめぇ無視すんな!」
とことんまで俺を無視した京極は、そのままどこかへ歩いていってしまった。
あの野郎今度シメる。
あぁ、でもあいつの言霊嫌いなんだよなぁ。マジで嫌い。超嫌い。
だってあいつに欝にさせられたことあるもん。金縛りだってあるし。まぁ俺があいつに嫌がらせしたのが悪いんだけどさ。
「カッ! 今度会ったらただじゃおかねぇ。ファック! ファァァック!」
(京極さんいい人だ……応援に感謝ね!)
その後、お勧め本屋やら服飾店やらとにかく中々目に付かない隠れた名店を案内して一日が終わった。
そういえばこいつ、今日ははしゃいでる時くらいしかプレミアムって言わなかったな。
まるで借りてきた猫のよう……ハッ!
「まさか猫被りからのウルトラC!?」
「え?」
「……いや、それはないか。むしろ中身は虎もいないのに見栄を張る狐のようなものだ」
「はい?」
理解できんなら理解しないほうがお前のためだ。
……あぁ、典型的なかませキャラとなったお前が脳裏を吹っ飛んでいったぞ。これはヤバイ。俺の予感は結構良く当たるからな。
未来予知にならんことを祈っておくよ。
「んっあ~~~! ……さて!」
「? なんですかまた」
「今日は十分に楽しんだことだろう。これで約束は果たしたな?」
「あ……」
買い物以上の事もやった気がするが、とんでもサービスだったような気がする。
まぁ武蔵が知らなくて俺が知ってる所はあらかた教えちまったし、ネタ切れだな……あとはアウトロー枠くらいしかねぇ。さすがにそっち側を案内するわけにも行くまいて。
ったく一日歩き回ったせいで超疲れたぜ。こりゃ俺にもいい事あってもおかしくないよなぁ。
っつかやたらと落ち込んでる武蔵を見てるのが嫌なんでちょっとしたフォローでも入れといてやるか。先輩だしな。
「ま、結構面白かったしな。また行こうや」
「よっしゃ!(もちろんです!)」
「いや、なんか本音の方が出てるが……まぁいいか」
しかしこの補填はどうするか。
今回の買い物で随分と金を使ってしまった。なんとかしたいところではあるが――
「まずは、あっちの方を優先すべきか」
あとがき
大丈夫。主人公が過敏なだけで、実際には二歳年下と買い物に行こうがロリコン扱いにはされません。
あと川神の男子生徒・・・というか一部の【魍魎】がヤバいだけです。
松永燕は一人だけスパロボに行けばいいと思う。
しかしまぁ……アニメに引き続き機械の力SUGEEEE!って感じにはなっちまいましたね。
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