朝の通勤ラッシュ時に列車の屋根に上る乗客が絶えないジャカルタで、業を煮やした鉄道会社が珍作戦を次々と繰り出している。無賃乗車やスリルを求めてなど理由はさまざまだが、どうしても上がりたい乗客側と、下ろしたい鉄道会社との攻防戦になってきた。
政府が株式100%を持つインドネシア鉄道会社のアフマド・スジャディ安全部長(49)によると、2010年は43人、11年は37人が屋根から落ち、計15人が死亡した。数百人が屋根に座る光景は名物だが、鉄道会社にとっては「危険きわまりない犯罪行為」だ。
同部長がこの2年間で試みた作戦は数多い。最初は放水だったが、「レインコート姿の乗客が続出して失敗」。次に、滑って上れないようにと油を塗ったところ、「車両管理部から、電気系統がショートして火事になると怒られた」。
先月には「ゴール・ボール作戦」を遂行。線路にサッカーゴールのような枠を設け、屋根ぎりぎりの高さに一つ5キロもあるコンクリート球をつるした。「頭に当たったら死んでしまう」と苦情が相次ぎ、上がる乗客は激減。だが、ヘルメットをかぶる強者もいた。
現在、実験中なのは「疑似トンネル作戦」。列車が通過する時、屋根すれすれの位置に鉄板をつけた枠を設置する。「それでもだめなら、汚水をひたしたモップをつける悪臭作戦を考えている」という。(ジャカルタ=郷富佐子)