銀行などで、10年を超える期間、金の出し入れがない、いわゆる「休眠口座」の預金を震災からの復興支援などに活用できないか、検討する動きが出ています。
一方、全国銀行協会などからは、金融機関の信頼を損ねることにつながると反対する意見もあり、政府は、課題の洗い出しを進めることにしています。
休眠口座について全国銀行協会などでは、金融機関に預けられた預貯金のうち、10年が過ぎても引き出しや入金などの取り引きがない口座としています。
こうした口座のうち、残高が1万円以上の場合、金融機関は、預金者に取り引きが長い間ないことを知らせる通知を送ることになっています。
預金者と連絡が取れなかった場合、金融機関は経理上、このお金を利益と扱って決算処理することになっています。
また、1万円未満の場合は連絡を取らずに、同じように利益として決算処理を行います。
銀行の担当者によりますと、休眠口座となるケースとしては、▽学生時代にアルバイト代を振り込むため銀行口座を作ったが、就職のため、ほかの地域に引っ越してそのまま放置された場合。
▽転勤先で、家賃や公共料金の引き落とし口座を作ったが、異動で口座が不要になり、解約を忘れてしまった場合。
▽へそくりのために口座を作った人が亡くなって、そのまま放置される場合などがあるということです。
こうした休眠口座の預金額は、銀行と信用組合、信用金庫だけで毎年、新たに800億円程度発生しているということです。
その一方で、預金者が休眠口座に気がついて払い戻される額も、毎年350億円程度あるということです。
藤村官房長官は、15日の記者会見で、「企業や経済全体が活力を取り戻し、拡大していくためには、成長マネーが十分かつ円滑に供給されることが必要だ。休眠預金の活用は、成長マネーの供給の拡大策として課題の1つであることは承知をしている。供給の対象としては、東日本大震災での被災企業も考えられる」と述べ、休眠口座の預金を復興支援策に活用することを検討する考えを示しました。
一方で、藤村官房長官は、「過去の経緯があり、なかなか難しいという面もあるのではないかと思う」とも指摘しました。
法律上は、銀行の場合、商法が適用されて、5年間1度も取り引きがないと預金者の権利が消滅することになっています。
しかし実際には、金融機関は、取り引きのない期間や金額の多い少ないにかかわらず、預金はあくまでも預金者のものだという考えをとっており、預金者から要求があれば、何年たっても払い戻しに応じることにしています。
全国銀行協会などでは、休眠口座を基金に移して復興支援などに使う案について、「本人に無断で第三者が預貯金を利用することになる」として、金融機関の信頼を損ねることにつながると反対しています。
一方、海外では、イギリスやアメリカ、カナダなどで休眠口座の預金をほかの基金や中央銀行に移して管理する制度を導入しているほか、アイルランドでは移管した資金を福祉などの事業に使う制度があります。
政府は、今後、休眠口座などについて、海外の事例の研究や課題の洗い出しを進めることにしています。
古川国家戦略担当大臣は、「国民の預金を勝手に取り上げたり、震災の復興財源として使うことは考えていない。ただ、世の中のために、特に次の世代のために、休眠口座に限らず眠っている資金を動かす政策を考えたい」と話しています。
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