東日本大震災の教訓を受けて、鉄道の津波対策を検討してきた国土交通省は、津波警報が出た際、線路などに目立った被害がなく、列車が走れる場合は、すぐに乗客を降ろさず、津波が来ない安全な地点までそのまま走らせることなどの対策の案をまとめました。
東日本大震災では、JRの5本の列車が津波に流される被害を受けましたが、いずれも大津波警報を受けて乗客を避難させたあとか、たまたま止まった場所が高台だったため、乗客に直接の被害はありませんでした。
国土交通省は、これらの教訓を全国の海岸沿いを走る鉄道に生かそうと検討を続け、対策の案をまとめました。
この中では、地震で緊急停車し、津波警報が出て浸水のおそれがある場合は、その場で乗客を降ろして避難させるのではなく、津波が来ない高台や内陸の地点までそのままを列車を走らせることを検討するよう鉄道各社に求めるとしています。
ただし、地震で線路や設備が被害を受けているおそれもあって、通常の速度では走れず、徐行運転になるため、津波の到達予想時間と安全な地点までの距離を確認しながらの難しい判断が必要になります。
また、国土交通省は、列車を走らせず、その場で乗客を降ろして避難誘導をする場合に備えて、沿線に近くの避難場所や高台の方向や距離などを示す標識を設置することも求める方針です。
このほか、地震のあと、列車無線が使えず、運転士に大津波警報が伝わらないケースがあったことから、国土交通省は、運転士に、ラジオやワンセグがついた携帯電話を持たせて情報の確保に努めることも検討するとしています。
国土交通省は、今後、さらに検討を重ね、こうした対策を報告書にまとめる予定で、鉄道各社は、それぞれの路線でどのような対応が適切か具体的な検討を進めることになります。
去年3月の巨大津波では、海沿いを走っていた列車が津波の被害を受けましたが、乗客に直接の被害はありませんでした。
警報が出てから津波到達までの緊迫した状況のなか、乗客や乗務員はどのように避難したのでしょうか。
宮城県の仙台と石巻を結ぶJR仙石線の下り快速列車は、地震が起きる直前、宮城県東松島市の野蒜駅を出発しました。
600メートルほど走ったとき、地震で緊急停車。
乗務員は、列車を降りて逃げるよう避難誘導を始めましたが、乗客の男性が「ここは高台なので降りずにいたほうが安全だ」と話したため、そのまま車内に残ることになりました。
結局、およそ60人の乗客乗員は、10メートルほどのこの高台に止まった列車の中にいたため津波の被害を免れました。
一方、運転士に大津波警報を伝えるはずの無線がつながらなくなった列車では、携帯電話のワンセグ放送が乗客と乗務員の命を救いました。
福島県の海岸沿いを走っていたJR常磐線の列車は、地震が起きたとき、新地駅に停車していました。
本来、大津波警報は、指令から無線で運転士に伝えられますが、地震のあと、つながらなくなっていました。
このとき、乗客が携帯電話のワンセグ放送で大津波警報に気づき、たまたま乗り合わせていた2人の警察官の誘導で避難し、およそ40人の乗客乗員は津波から逃れることができました。
▽ 震災時の鉄道混乱で対策へ (2月15日)
[関連リンク] |
|