経済

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日銀:インフレ目標導入 政策効果に限界も

日米の中央銀行の対応
日米の中央銀行の対応

 日銀は実質的なインフレ目標の導入と追加金融緩和の「合わせ技」でデフレ脱却に向けた強い意志を示した。しかし、既に日銀の実質ゼロ金利などの緩和策は長期化しており、市場では「政策効果はもはや限界」との指摘もある。

 日銀は、10年に始めた包括的な金融緩和策を当面は継続する姿勢を明確に打ち出した。日銀は国債などの買い入れ基金を10兆円積み増して市場の資金をジャブジャブにし、企業の設備投資や一般家庭の消費を促すことでデフレ脱却に結びつけたい考えだ。しかし、国内ではこれまでの緩和策で、長期金利の指標となる10年物国債の利回りが、既に1%を割り込む超低水準に下落。これ以上の金利低下は難しく、政策効果は限られている。また、欧州債務危機など世界経済の先行きに不安がある中では、たとえ低金利で借りられても、企業の設備投資意欲は高まらない。そもそも日本でデフレが長期化しているのは、少子高齢化による国内の需要減少など構造的な要因が大きいとの指摘もある。

 白川方明・日銀総裁は14日の会見で「デフレ克服には潜在的な成長率を高めることが必要。それには企業、銀行、政府、日銀が協力して役割を果たすことが必要だ」と述べ、日銀の金融政策だけでは限界があるとの考えを示唆した。

 さらに、インフレ目標を達成することの難しさもある。適切な物価上昇率の水準を設定し、その目標に沿った形で金融政策を行うという広い意味での「インフレ目標」は、既に多くの先進国で導入済み。欧州中央銀行(ECB)は「2%以下で2%近く」を中期的な物価安定目標と定義し、米連邦準備制度理事会(FRB)も1月に2%を目標(ゴール)と定めたばかりだ。白川総裁は「FRBと日銀の政策運営の枠組みは同じ」とし、日銀が打ち出した政策は、物価上昇率だけを見て機械的に金融緩和・引き締めの判断をする狭い意味での「インフレ目標」ではないと強調した。

 しかし、インフレ目標導入の代表例とされる英国では、イングランド銀行(BOE)が物価上昇率2%を目標に掲げているが、最近では上昇率は4%に達している。それでも景気低迷を理由に金融引きしめには踏み切れず、目標は形骸化しつつある。BOEと異なり日銀は目標が達成できなくても責任が問われることはなく、市場では「政策運営に対する拘束力がない。物価上昇率1%という数値を掲げただけで実効性に欠ける」(クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト)という冷ややかな見方もある。【大久保渉】

毎日新聞 2012年2月14日 21時57分(最終更新 2月15日 9時07分)

 

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