東京都教育委員会が、1、2年生時に必要な単位が取れなくても進級する「単位制の考え方を取り入れた高校制度」を、16年度をめどに導入する方向で検討していることが分かった。対象は都立の全日制のうち中途退学者の多い高校。留年して「後輩」と一緒に学ぶことを嫌がる生徒たちの学習意欲引き留めを狙う。3年で卒業できない生徒についても、4年目は独自の教室を用意することを検討する。都教委によると、全国でも例のない試みという。
ほとんどの全日制高校は、学年ごとに教育課程が決められ、修得できない教科があると留年することになる「学年制」だ。「単位制」は学年の区分がなく、決められた単位を取得すれば卒業できる。88年に全国の定時制・通信制課程で導入され、93年から全日制でも導入可能となった。
都教委によると、都立高校では、進学重視の学校や普通科目と専門科目の双方を学ぶ総合学科など13校で単位制が取り入れられているが、今回は中退防止のため「3年間での卒業にこだわらない」学校を想定した。
都教委によると、全日制の都立高に08年春に入学した4万66人のうち、3年で卒業したのは3万6424人。113人が留年して学校に残っているのに対し、入学者の5.5%にあたる2212人が中途退学していた。また、10年度の1年間に退学した1879人のうち「退学後、何もしていない」が約24%に上り、13年前の調査から約6ポイント上昇している。退学理由には、留年して後輩と同学年になり、学校が嫌になるケースが多いという。
そこで都教委は学年制の全日制高に、3年までは成績が悪くても全員が進級できる新制度の導入を検討。卒業できなくても、4年目以降は不足分の授業を受けるだけでよいとする。後輩と顔を合わせずにすむよう、学校以外の場所を確保し、補習や個別授業を受けさせるサテライト方式も検討している。
だが、卒業できない生徒を「3年生」に据え置くことで、生徒が大幅に増える学校が生じる可能性もある。都教委は今後、これに対応する教諭数や経費などの検討を進める方針だ。【柳澤一男】
毎日新聞 2012年2月15日 15時09分(最終更新 2月15日 16時05分)