今回もたくさんのご応募、ありがとうございました。
■最終候補6作、いずれも力が入った作品でしたが、中でも『デッドマン・ミーツ・ガール』が抜けていました。物語を構成する力がある作者だと感じました。文章もテンポよく読める。ただ、「ゾンビ狩り」という特殊な舞台を構築しているのに、ところどころ設定を詰めきれておらず、全体の完成度を大きく下げています。また、エンディングの後味の悪さも減点対象。といった欠点も多かったので、特別賞にとどまりました。今後の研鑽に期待します。他の候補作もそれぞれ長所はありましたが、共通する短所が、「強引でご都合主義的な展開」でした。書きたい場面、セリフそのものはよくても、そこへ物語を「必然」として導けていない。物語の構想・設計段階での十分な詰め、いったん書ききった後の徹底的な推敲、を心がけてください。また、主役以外のキャラクター描写が全体に不十分な作品が多い。サブキャラをきちんと立てることも、おもしろい小説の必要条件です。
■テーマ部門は銅賞1作品。『いつかこの手に、こぼれ雪を』は、主人公2人しか登場しない物語ですが、自然にうまくまとめている。クライマックスの描き方も素晴らしく、読後感もよい。派手さはないけれど、非常に好感が持てるロマンス小説です。ただ、テーマの「三十秒」の使い方に工夫が足りない。その部分の減点が、銀賞以上には推せなかった原因です。筆力は極めて高いので、今後の可能性、将来性は高い作者だと思います。他の4作品は、『いつかこの手に?』に比べると、文章力、構成力、キャラクター造型などで数歩遅れをとっていました。次回以降に期待します。
■イラスト部門は、受賞されたユンケルさんが際立っていました。キャラクターの表情がすばらしい。将来性が非常に高いと感じました。期待しています。他の候補作も含め、イラスト部門は毎回、レベルが上がっています。応募を重ねるごとに着実に進歩されている方も多い。次回も期待しています。
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