2011年12月16日 20時44分 更新:12月17日 1時20分
政府は16日、原子力災害対策本部(本部長・野田佳彦首相)を開き、東京電力福島第1原発の原子炉が「冷温停止状態」になったとして、事故収束に向けた工程表のステップ2完了を確認した。首相は「原子炉は冷温停止状態に達した。事故そのものは収束に至った」と宣言。今後は除染、健康管理、賠償に全力を挙げる考えを示した。早期の収束宣言で内外の不安を払拭(ふっしょく)する狙いがあるが、住民の帰還にめどが立たない中での「収束宣言」には批判も出ている。
首相は、首相官邸で記者会見し、「事故との闘い全てが終わるわけではない。ステップ2が終わったから、政府が対応で手を抜くとか、福島からどんどん力をそいでいくということは全くない」と強調。除染などに1兆円超の予算を投入することを明言した上で「原子炉自体の安定を目指す段階から、廃炉に向けた段階へ移行する。廃炉に至る最後の最後まで、全力を挙げて取り組む」と述べた。
一方、東電の西沢俊夫社長は東電本店での会見で、「原子力損害賠償支援機構が(経営合理化策を盛り込んだ)総合特別事業計画をまとめる来年3月に(経営陣の)責任の取り方を示したい」と進退に含みを持たせた。
完了に伴い、政府は「政府・東京電力統合対策室」を同日廃止。新たに枝野幸男経済産業相と細野豪志原発事故担当相を共同議長とする「中長期対策会議」を設置した。21日予定の初会合で、最長40年かかることなどを盛り込んだ廃炉工程表を了承する。
住民の避難区域については、現行の警戒区域と計画的避難区域という2区分を見直し、年間の放射線量に応じて3区分に再編する方針で、18日に細野氏らが福島県を訪れ自治体に説明。地元と協議した上で年内に公表する。帰宅が困難な区域は土地買い上げを含む支援策を検討する。
工程表は4~7月を「安定的な原子炉の冷却」を目指したステップ1、7月~来年1月中旬を「放射性物質の管理・抑制」を目指すステップ2で構成。政府は「圧力容器底部温度がおおむね100度以下」「敷地境界での被ばく線量が年間1ミリシーベルト未満」の達成を「冷温停止状態」と定義。細野氏が9月、国際原子力機関(IAEA)の会合で、前倒しして「年内完了」を表明していた。【笈田直樹】
政府は「冷温停止状態」としたが、原子炉内部の状況も把握できないまま。多くの不安要因が残り、綱渡りの作業は続く。放射性物質の最大放出量(11月26日~12月6日)は毎時0.6億ベクレル。原発敷地境界の線量は最大年0.1ミリシーベルトと、冷温停止状態の目標(年1ミリシーベルト)未満になる。だが、原子力安全・保安院によると、事故前の10~20倍で、封じ込めは完全にできていない。この放出量は気体分の試算で、海に出た液体分などは含んでいない。
また、圧力容器底部温度は7月以降、順次100度以下を維持しているが、最も高い2号機は誤差を考慮すれば90度弱。16日も細野豪志原発事故担当相は「燃料がどこにあろうとも十分冷却できている」と釈明に追われた。建屋にたまった汚染水は13日現在、ドラム缶43万本の8万6360立方メートル。東電は仮設タンクの増設を続け、年末までに計14万立方メートルに容量を拡大する方針だが、12年3月には満杯になる。【中西拓司】