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社説

共通番号制 国民の監視強化は困る(2月15日)

 個人情報の監視が強まらないか。懸念が拭えない。政府が共通番号制の導入に必要な「個人識別番号法案」を閣議決定した。

 番号に「マイナンバー」という名前を付け、2015年1月から運用開始を目指すという。

 だが、この制度にはプライバシーをどう守るかなど課題が多い。国民の間にも根強い抵抗感がある。

 マイナンバーという呼び方は一見親しみやすいが、問題点を国民の目から覆い隠すようでは困る。導入を急がず国会で慎重に審議すべきだ。 番号制は、国民一人一人に番号を割り振り納税実績や年金などの情報を一元管理する仕組みだ。

 社会保障サービスが受けやすくなり、納税手続きの簡素化や所得の過少申告などの防止に役立つ―。政府はそう利便性を強調している。

 問題は個人情報の取り扱いだ。

 制度を機動的に運用するには、医療機関から診療費などの提供を受けたり、金融機関から情報を出してもらったりする必要が出てくる。

 こうした情報を政府は本人の事前同意なしで集める方針だ。

 これでは重要な個人情報が知らない間に管理され、行政によって都合よく利用されかねない。

 しかも内閣府の最新世論調査では国民の約8割が制度の内容を「知らない」と回答している。

 国民の理解が不十分な現状で導入を急げば混乱を招くだけだろう。

 さらに心配なのは情報流出や不正使用などの対策が手薄なことだ。

 政府は行政機関を監視する第三者機関を設置し立ち入り検査などの強い権限を与えることや、漏えいに対する罰則を法案に盛り込んだ。

 だがどんなに厳しい監視制度をつくっても、不正使用を完全に防ぐことは難しいのではないか。

 番号制を導入している米国では個人情報を盗み出して社会保障費を不正受給した例も伝えられている。

 個人情報がいったん漏えいすれば、被害や影響は取り返しがつかないことを忘れてはならない。

 政府が番号制導入と消費税の増税問題を結びつけて検討を進めていることにも首をかしげる。

 政府は、消費税率引き上げに伴い低所得者向けの還付や給付金支給などの負担軽減策を検討している。

 そのためには個人の所得を正確に把握する必要がある。番号制をその手段にしようというわけだ。

 だが番号制導入と税率の引き上げはそもそも別の問題である。

 番号制は1980年代から検討されたが何度も導入が見送られた。国民が必要性を感じなかったのも一因だろう。何のための制度なのか。納得できる説明を政府に求めたい。

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