特別対談 河野太郎(自民党前幹事長代理)×山本太郎(俳優) 「原発に買われた政界と芸能界」

2011年09月30日(金)
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「原発の〝げ〟の字も出すな」

河野 仮に自民党が与党でフクシマ対策に取りかかっていても、やはり同様の間違いを犯していたでしょう。今の民主党と自民党は五十歩百歩だからです。でも今回の民主党の過ちの原因は、官僚を疎外して何でも「政治主導」で決めたことにあります。

 '95年の阪神・淡路大震災以降、官僚は地震への対応策を考えていたのに、菅内閣は官僚を毛嫌いする余り、彼らの知恵を借りなかった。政権を取って間もない民主党にそんな非常事態に対応できる能力や知識があるわけもなく、結果として対応が遅れ、情報の公開も後手後手に回りました。そこは「民主党ゆえの失策」といっていいでしょう。しかし、原子力政策に関しては自民党も民主党と同じスタンスを取っていました。

山本 原発推進ですね。というか、元を糾せば、自民党の政策を民主党が引き継いだ格好ですが。

河野 その通り。自民党は電力会社から政治献金をもらっていたという理由で、民主党は電力会社の労働組合の票が欲しいという理由で、それぞれ原子力にすり寄りました。だから仮に自民党政権で3・11が起きたとしても、原発事故の重大性を隠蔽するという、民主党と同様の事態を引き起こした可能性は否定できません。実際、私は2年前に自民党の総裁選に出た時、推薦人になってくれたある人から、「応援はするが、その代わり選挙期間中は原発の〝げ〟の字も出すな」と言われました。

山本 政界も芸能界と同じで、原発に構造的に買収されていたんですね・・・・・・。ところで僕は今、福島の子供たち、特に避難指定地域には入っていないけれども、放射能に高濃度に汚染されている地域に住む子供たちを、北海道に避難させようという活動を行っています。政府は福島第一原発から20km圏内を主な避難地域にしていますが、低線量被曝の健康リスクをまったく考えていません。確かに低線量被曝では、健康被害の因果関係を証明することが難しい。

 しかし、チェルノブイリの事故以降、ベラルーシでは15%しか健康な赤ちゃんが生まれてこないというデータもあるそうです。この先、どんな悲劇が日本を待ち受けているのか分からない---。だからこそ、予防原則に則って、子供たちだけでも移動させるというのは、最低限必要なことだと訴えてきました。

河野 文部科学省が子供の学校の屋外活動を制限する被曝線量を、「年間20ミリシーベルト」と1ミリシーベルトから20倍も引き上げたのは、そうしないと〝疎開〟が必要になるからです。今思えば、あの一件が国民の政治不信の決定的な始まりだった気がします。しかし、疎開が必要なら疎開させればいいんですよね。山本さんが仰るとおり、「危ないならまず出せよ」、と。そして原子力ムラに汚染されていない、海外の専門家を交えて議論を尽くした上で、どこまでが安全かという基準値を作るべきでした。

山本 僕は、今すぐにでも福島の子供たちを避難させなければいけないと思っています。でも、北海道に避難させるのは凄くハードルが高いんです。自主避難ということになると実費でおカネが掛かるし、特に母子家庭の人にはかなり負担が掛かります。民主党には自主避難する人たちを金銭的にバックアップするシステムを作ってほしいと思いますが、今の政府に望むのはムリでしょう。

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