"廃炉まで100年"福島に突きつけられる覚悟チェルノブイリが教える現実 最終回 ---彼の地は25年経った今も 「石棺作業」に追われていた

2011年10月01日(土) フライデー

フライデー経済の死角

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(右)チェルノブイリ原発内にあるオフィス棟。各原発の制御室と渡り廊下でつながっている。窓に近づくと線量が高いと注意された
(左)チェルノブイリ原発の老朽化しつつある石棺を覆う新たなシェルター(建屋カバー)建設の予想図。まだ数十年かかるとされている〔PHOTO〕アフロ(予想図)

 と、これまでの技術では対応できず、廃炉が実現するまでには長い期間が必要であることを認めているのだ。

 福島第一原発の廃炉問題は、原子炉のほぼすべてが吹っ飛んだチェルノブイリよりも、'79年に米国でメルトダウン事故を起こしたスリーマイル島原発事故と比較したほうが分かりやすい。京都大学原子炉実験所教授・中島健氏が解説する。

「スリーマイル島では、事故後3年でようやく中にカメラを入れることができた。6年後に核燃料を取り出せるようになり、事故から11年経った'90年にやっと核燃料の取り出しが終わったのです。福島第一原発の場合はスリーマイル島より、もっと燃料が壊れ、ほとんどの部分が崩落しているでしょう。圧力容器が損傷している可能性も非常に高い。そうなると、作業的にはかなり厳しい条件です。いまだに線量が高くて、うかつに中に入れない状況が続いていますから」

 炉心が高温になり圧力容器内で溶融することをメルトダウンという。そして、圧力容器を突き抜けて格納容器に溶け出すのがメルトスルー。福島第一原発では、さらに格納容器の底も溶かして建屋のコンクリート床部分にまで達するメルトアウトを起こした可能性がある。そうなると、核燃料をどうやって取り出すのか。中島教授が続ける。

「東電は廃炉までの作業イメージを発表していますが、いくつか想定が甘いと思うところがあります。まず、建屋内の燃料プールに残された使用済み燃料については、燃料の健全性がある程度維持されていることが前提になっています。しかし、大きく損傷した燃料が存在した場合の対策、処理方法を検討しておくべきです。次に、炉心の燃料の抜き取りですが、格納容器内の冠水が前提となっています。冠水を実現するためには格納容器の補修が必要になりますが、その損傷個所も特定できない状況です。最後の燃料の取り出しは、相当な技術的困難を伴います。格納容器外に燃料が流出していた場合の対応策も検討しておく必要がある」

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