"廃炉まで100年"福島に突きつけられる覚悟チェルノブイリが教える現実 最終回 ---彼の地は25年経った今も 「石棺作業」に追われていた

2011年10月01日(土) フライデー

フライデー経済の死角

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(左)1号機の燃料プール内で冷却が続けられる核燃料体。廃棄場所もなく法整備もないため未だに原発内で眠っている
(右)運転は停止中だが燃料プール内の使用済み燃料の冷却作業の監視が続けられるチェルノブイリ原発1号機の制御室

 ここには4人の技術者が常駐し、交代しながら24時間態勢で燃料プールの監視をしている。燃料プールに設置されている可動式のカメラの映像が、14インチほどのモニターに映し出される。プールに沈む燃料体が見えるが、この部屋の空間線量は1マイクロシーベルトあるかないかといった程度だ。

 技術者の一人はこう話した。

「1号機の燃料は二つのプールに分けて管理しています。温度は38℃前後で安定しています。核反応を起こす可能性があるので監視しているのです。専門的な資格を持たないとこの仕事はできませんが、個人的には、あまり専門的な知識は必要ないと思います」

 何も起こらなければ、ただ監視するだけの退屈な仕事である。いったいいつまで監視を続けなければいけないのか聞くと、大きな課題が三つあるという。

「まず、燃料という高濃度の汚染物質を半永久的に貯蔵(ストレージ)する施設がない。二つ目は、燃料を貯蔵するために処理をする施設がない。そして三つ目は、処理を施すためのルール(法整備)がまだ整っていないことです。現在、ストレージする施設を建築中です。燃料を小分けし、それぞれを容器で覆い、穴に埋めるのです」(前出・技術者)

 25年経っても、まだ廃炉の終着点が見えてこないのだ。3基がメルトダウンを起こしたとされる福島第一原発の廃炉作業は、どうなるのだろうか。

廃炉に必要な技術がない

 福島第一原発は、9月に入って1号機を建屋カバーで覆う作業が進んだ。中旬にはほぼ終了に近づき、何とか放射性物質拡散を抑えられる目途がついた。安定冷却も見えてきて東京電力には、どことなくホッとした雰囲気が窺える。9月14日には、内閣府原子力委員会の中長期措置検討専門部会が、廃炉完了までに必要な「19項目の作業課題」を確認した。その中で、燃料取り出しの前提となる、格納容器全体を水で満たす「冠水(水棺)」など5項目については、作業に必要と予想される技術開発が追いついていないことも明らかになった。

 つまり、見えているようで、廃炉への道のりは見えていないのである。同部会自身、「研究開発課題が多く開発は長期間になるだろう。これまで格納容器にまで漏れ出た燃料を回収した経験はなく新規の研究開発が必要となる」

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