「その話は、ご破算になったんだよ! どこが(カニカさんにおカネを)支払う、支払わないは、あんたらに言うことじゃないじゃん。なんで言わにゃいかんのだ、ワシが。どうして50万かって? 50万じゃないよ、100万くらいで、オレが話をつけとったんだよ。50万というのは、彼女がどういう顔をするかと思って、様子を見ただけのことなんだよ」
「100万円の予定だった」
つまり、こういうことだという。50万円の見舞金は、東芝の4次下請けであるこの会社の社長が3次下請けの会社に掛け合って渡すことが決まったもの。金額は当初100万円程度の予定だった。50万円を提示して反応を見てから決めようと思っていたが、カニカさんが弁護士に相談して労災申請をすることを知ったため、すべて白紙に戻した---。
ちなみに、カニカさんは前出の大橋弁護士の協力のもと、7月13日に、元請けの東芝が労災保険窓口に指定している横浜南労基署で手続きを行った。現在は労災申請の認定待ちの状況だが、大橋弁護士は、
(1)東電や東芝が、過酷な作業に従事する原発労働者を守る医療体制を十分に取っていなかったこと
(2)放射性物質が飛散する劣悪な環境の中で、重く蒸し暑い防護服を着用しながら、精神的な緊張を強いられる作業をしていたことが死因となった、などの理由から、労災が認められるべきだと主張する。
「労災認定されれば、遺族補償として2ヵ月に1度、ある程度の生活ができるだけの保証金が出ます。また、労災申請の結果が出た後には、別途、東電や東芝に対して、賠償請求を行うことも考えています」
だが、今後もし労災が認められたとしても、信勝さんの死から5ヵ月が経過した現在においても、東電や元請けの東芝からも、見舞金や補償金は支払われていないことに変わりはない。
今回の問題には、原発作業員を派遣する企業の請け負い構造にも問題がある。信勝さんの場合、東電から原発の現場作業を請け負っている東芝が元請けで、その下に3つの下請け会社を挟み、信勝さんが所属していた4次下請け会社があるように、次々と仕事が別会社に委託されていく。そのため、東電や東芝からしてみると、現場でどんな作業員がどのような状態で勤務しているかを把握するのが非常に困難になっているのだ。
今回の事態について、東芝はどう考えているのか。広報に問い合わせると、次のような回答が得られた。
「御遺族の代理人から、亡くなった方の直接の雇用先に対して、ご遺族への直接接触を控えるよう要請がされており、それを踏まえて現時点ではご遺族に対して当社からはご連絡をとっておりません。現時点で当社としては、労働基準監督署が労災か否かの判断をスムーズに下せる様、誠意をもって、労災申請に関する事実の解明に協力していく所存です」
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