原発再稼動に動き出した町長の足元ではーー関西電力「大飯原発」 の仕事を請け負う「おおい町町長」の経営する会社

2011年10月26日(水)
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 おおい町にAという会社がある。従業員は14名。外観は小さな鉄工所という風情である。同社の法人登記簿にはその目的として「建設機械、濁水処理プラント機械及びこれらの部分品並びに附属品の製造、販売、修理」等とある。しかし、A社は町の小さな町工場でありながら、関西電力大飯原発内にも作業所を持ち、同社や同社関連の下請け企業から直接、間接に原発関連の仕事を請け負っている。

[表1] A社 原発関連の受注残高の推移
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 A社が福井県に提出した工事経歴書を確認したところ、平成15年4月から同23年3月までの期間、関西電力から直接受注した大飯原発関連の請負額は1億5900万円。また、同じく原発関連で関西電力と同社下請け企業からの受注額は総計4億6800万円。その推移は[表1]のようになった。グラフを見てもわかるように、平成18年以降、A社の原発関連事業は、ほぼ増加の一途だ。

 余談だが、私が福井県庁に出向いた今年7月末の時点で、確認できたA社の工事経歴書は平成9年、ならびに同15年から19年までのもの。平成20年から22年までの工事経歴書が提出されていないことを県の担当者も訝り、「建設業法違反の疑いがあるので提出を指導する」と明言。

 後日、22年の工事経歴書が県に提出されたものの、20年、21年にいたっては発注先が不明記なうえ受注総計しか書かれておらず、そのため先の「関西電力の請負額1億5900万円」という数字も、この2年間を差し引いた額でしかない。なので、実際の関電からの直接受注額はもう少し増えるものと思われる。

 ちなみに平成18年は、前述した旧名田庄村と旧大飯町が合併した年で、新・おおい町の町長選挙(4月2日投票日)が行われ、時岡氏ただ1名が立候補、無投票で当選している。

 実は、このA社の創業者は時岡町長。現在は町長の長男が社長に就任しているものの、時岡町長はいまも取締役として名を連ね、A社株の約46%を保有する筆頭株主である。

 もちろん、A社と関西電力との商取引は合法的なものであり、そのこと自体を他人がとやかく咎めるわけにはいかないだろう。だが、その企業が原発立地地域の自治体トップと深い関係を持つとしたら話は別ではないのか。果たして関西電力に対して行政的な中立性が担保できるのか、はなはだ疑問なのである。この点について私は10月12日、おおい町役場を訪問、時岡町長に直接問いただした。

「A社は私が創業したもので、関西電力とは創業時からの取引。いまは息子が引き継いでいる。私は経営には口出ししていないのでA社とは無関係。株主や取締役にしても手続き上、残っているだけ。報酬も受け取っていない」(時岡町長)

 しかし、法人登記簿に株主と取締役の名前がある以上、一般的には実質的な経営者と見られても仕方がないのではないか。それで行政的な中立は保たれるのか。

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