論説 :  荒れる松江の中学生／対話をあきらめず求めよ 　松江市内の中学校が荒れている。生徒による暴力行為が激増し今年に入って１月中に４人の中学生が傷害容疑などで逮捕された。 　１カ月に４人も逮捕者が出る異常事態に松江市教委は「非常に深刻」（福島律子教育長）と受け止め、関係機関との連携を強めるなど対策に乗り出した。 　生徒指導部署の強化を含め市教委の組織を見直すとともに、問題を起こした生徒に対する警察、児童相談所などと連携したサポート体制を強化する。 　なぜ松江市内に限って暴力を振るう生徒たちが増えているのか。その背景はよく見えないが、学校を中心に発生する暴力行為の特徴としてグループ化の傾向が見られるという。 　特定の生徒が暴力行為を繰り返す一方で、そうした生徒を中心にグループをつくって問題行動を起こすケースが多い。 　お互いにつながりを求める意識が攻撃性に吸引され、暴力行為に加わる生徒たちの抑制意識が集団性によって薄れる。そうした集団意識が暴走を招いているのではないかと指摘する声もある。 　それにどう向き合うか。学校内外の暴力を「指導」の名目を借りた力で押さえ込めば手っ取り早い。しかし、それでは対症療法にすぎず本当の解決につながらない。 　やはり子どもたちの声に真剣に耳を傾け、暴力でしか訴えることのできない心のおりを見つけ出す。そのために地域の力を借りながら、学校と家庭の対話をあらためて促したい。 　松江市内の中学校では今年１月同級生に暴力を振るった生徒が傷害容疑で逮捕されたほか、市内の倉庫に侵入した中学生２人が窃盗容疑で逮捕。さらに別の中学生が路上で８６歳の男性を突き飛ばすなど、中学生だけで今年に入って４人の逮捕者が出た。 　昨年１年間に逮捕された松江市内の中学生は傷害容疑の１人。それ以前は２００６年に１人逮捕されて以降ゼロが続いたが、今年に入ってから急増している。 　この数字を裏付けるかのように松江市内の中学生による暴力行為も増えている。本年度の暴力行為は昨年２学期末までに報告されただけで２２７件。前年度７５件の３倍以上に上り、０６年度以降年間１００件を超えたのは初めて。 　内訳は生徒同士や教師に対する暴力が急増し、ガラス窓を割るなど器物破損も多い。生徒同士の暴力を止めに入った教師が殴られるというケースも目立つ。 　自分の気持ちを言葉でうまく表現できず、そのいら立ちを暴力で発散させようとする。注意されると逆上して暴力をエスカレートさせる。話し合うということに背を向けながら、腕力にたのむ振る舞いがはびこっている。 　学校側も懸命に食い止めようとしているが、集団化した暴力行為がいったん広がると、抑えることは困難という。教師だけでは限界があり、一部とはいえ教育現場の荒廃が進む。 　安易な一般化は避けなければならないが、保護者の規範意識が低下している影響を指摘する声も多い。加えて携帯電話などの普及で情報の洪水に規範意識がのみ込まれる懸念。顔の見える生きた意思の交流を取り戻すことが大切だ。 ('12/02/14 無断転載禁止) << 公務員給与削減／改革推進の…