特別読み物 被災地で捕まった人たち 「震災後」裁判傍聴記

2011年11月24日(木) 週刊現代 

週刊現代 経済の死角

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 内部被曝に効くというデタラメを提案したのは営業担当者の男だったが、社長と専務の夫妻もその提案に承諾をした立場であるため、この3人が起訴された。

 特に年配の女専務が着ている黒いサテン地のギラギラ光沢スーツ、そしてピンクのバラ造花があしらわれた真っ白なバッグが、厳かな法廷で異様なオーラをまぶしく放つ。

 宣伝広告を見た会員のひとりから、本当に子供の内部被曝に効くのか、しっかり効果を確かめたのかと、電話でクレームが入ったという。だが、「若い女性がヒステリックに叫んでいるだけだったので」、このクレームを黙殺して、違法な宣伝を続けた。

 自分たちの罪を棚に上げ、健康に関する客の疑問を無視するような会社に、はたして他人の健康を扱う資格はあるだろうか。

 このほか、放射能不安に乗じてミネラルウォーターのボトルに水道水を入れて販売した業者の事件、震災ボランティアを現地へ運ぶバス業者の選定にあたって「よそのバスを選んだら、そのバスを取り囲む」と脅した男の事件、深夜の避難所でボランティアの10代少女を襲った男の事件などについても、審理が予定されている。

 地震・台風・火山噴火・豪雪など、我々は多くの自然災害を克服すべき宿命を背負った国に住む。大震災に付け込む犯罪は、誰にとっても他人事とはいえまい。

 これからも全国の裁判所を飛び回って取材を続けながら、震災に付け込み復興に水を差す犯罪者連中の言い訳に、クギを刺していきたい。

ながみね・まさき/1975年長崎県生まれ。九州大学法学部卒後、司法浪人を経て、ライターになる。『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎)は30万部を超えるベストセラー。近著に『恋の六法全書』(阪急コミュニケーションズ)がある

「週刊現代」2011年11月26日号より

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