特別読み物 被災地で捕まった人たち 「震災後」裁判傍聴記

2011年11月24日(木) 週刊現代 

週刊現代 経済の死角

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 しかし、早朝5時前という犯行時刻は、ボランティア活動を行う時間帯としては早すぎた。かえってパトロール中の警官の目に奇異に映ったようで、3人は現行犯逮捕。他人がほとんど出歩かない早朝に、コソコソ盗んだため、御用となった。

「散らかった被災地を片付けているんだから、少しは警察も大目に見てくれると思っていた」と、大震災当日に還暦を迎えた「子分」の1人は、いい歳をして甘い認識を述べた。

 このたびの大震災では被災3県で約2万人といわれる人命が失われたが、そのうち約4分の1は石巻市での犠牲だ。後日、主犯格の男には、懲役4年の実刑という厳しい判決が言いわたされた。というのも、過去に前科が22犯もあったためである。いい加減にしろ。

「仙台市若林区の被災者です。着るものも家も何もかも無くなりました。救援物資も届きません。心優しい人、よろしくお願いします」

 インターネット上の東日本大震災特設掲示板に、ある都市銀行の口座番号を添えて書き込まれた文章である。

 今年3月18日ごろのことだった。ただ、口座番号以外はすべてウソ。つまり義援金詐欺の書き込みだ。

 津波の被災者を装ったこの書き込みは、のべ4万人以上が閲覧したとみられ、激励のコメントも全国各地から寄せられた。だが、騙されて義援金を振り込んだ人はゼロ。しかも口座名義が男の本名だったという、ほとんど作戦が練られていない稚拙な犯行だったので、あっさり捕まった。

 ちょうど「大震災につけこんだ詐欺に注意!」と、世間で盛んに呼びかけられていた時期だった。看守2人に連れられ、手錠・腰縄に繋がれた姿で法廷に現れた45歳の男。薄っぺらい犯行には似合わぬガッシリとした体格でスッキリ短髪。あろうことか今回の被災県である宮城の出身だという。犯行当時は都内の工事現場で作業員をしていた。

 ネット掲示板へのウソ書き込みは、仕事の昼食休憩中、誰にも見つからないよう作業車の中にこもり、ケータイをカチャカチャいじって実行したのだという。

 しかも月収は約25万円あり、決しておカネに困っていたわけではなかった。掲示板でほかに似たような文面を見かけて、「『これで本当におカネが入るのかな』という軽い気持ち」だったと、被告人は犯行の動機を話した。

震災ボランティアで情状酌量

 山形県鶴岡市。震災の被害が少なかった東北地方の日本海側でも、朝から簡易裁判所で「義援金泥棒」の裁判が行われていた。傍聴席には地元の記者も多数つめかけ、注目度の高さが窺えた。

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