保管タンクを作っても作っても、高線量の水が建屋の地下に溜まっていくのだ 東電は「行き場のない汚染水8万t」 どうするのか

2011年12月09日(金) フライデー

フライデー経済の死角

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 細野豪志原発相(40)は、11月12日に福島第一原発を訪れ作業員らを激励するとともに、年内の原子炉の「冷温停止」に自信を見せた。この冷温停止を実現する柱とされるのは、原子炉内に溜まった高濃度汚染水を浄化し、原子炉に戻して冷却のために再利用する「循環注水冷却」システムである。しかし、今回の汚染水の浄化処理は、この循環注水冷却とは別物で、タービン建屋内の汚染水の量を減らすためのもの。このもう一つの汚染水問題が、冒頭で触れたように〝待ったなし〟の状況に追い込まれているのだ。

 これまで除染された汚染水の累計は、約15万8000tにも上り、その保管のために東電は10月から、かつて「野鳥の森」と呼ばれていた原発敷地内の森林を伐採。東京ドームの8倍もの広さの土地を作り、11万tの汚染水を収容するタンクを設置してきた。しかし、これらのタンクもすでに容量の8割にあたる約9万tが一杯になっている状態である。現在、現場では急ピッチで追加の保管タンクが準備されているが、タービン建屋地下の汚染水の量は一向に減らない。その理由は、タービン建屋に大量に流入している「地下水」だ。

「タービン建屋地下の壁には、震災前からひび割れがあり、原発事故以降、そのひび割れが大きくなったのでしょう。9月の時点で、毎日200~500tの地下水が流入していると言われるようになりました」(前出・原発作業員)

解決策は「ない」

原発から約800m離れた地点で作業にあたる作業員たち。手前にある何本ものホースは、除染された水を保管タンク(写真奥)まで送るためのものと思われる

 地下水の流入が止まらなければ、タービン建屋地下の汚染水は溜まって行く一方であり、保管タンクを作っても作っても足りない。東電は、この致命的な問題にどう対処するつもりなのだろうか。

「地下水の流入を防ぐために、タービン建屋に止水工事を行っていますが、現在でも完全に止めることはできていません。今のところ、はっきりとした解決策はない状態です」(東電広報部)

 現段階では何も手がないというのである。しかも、仮に地下水の流入を防ぐことができ、建屋の地下に溜まった汚染水をすべてタンクに収容できたとしても、今度はその水を最終的にどう処理するのかという問題が残る。これについても東電は、「現段階で公表できるものではない。今後解決策の検討をしていく」(同前)と言うに留まったのだ。元日本原子力研究所研究室長の笠井篤氏はこう語る。

「セシウム吸着塔を通ることで汚染水の放射線量は減りますが、依然として少量のセシウム137などの放射性物質は含まれています。それを最終処理するためには何度も『ゼオライト』などの吸着剤に吸着させ、さらに汚染度を下げてから海に流す方法が考えられます」

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