ラブロフ外相は一貫して「両国の解釈は違う」と主張していたが、今回の来日で「法と正義」という言葉を使ったのは、意味があることかもしれない。
ラブロフ外相は「相互に受け入れられる解決策を模索する」とも発言した。ロシア側は以前よく口にしていたが、最近途絶えてしまっていた表現である。それが今回また外相の口から出てきた。ロシアは明らかに対日関係を好転させようとしていると思われる。
領土問題がネックとなり、日ロ間ではいまだに平和条約が締結されていないが、「平和条約の締結に向けた協議の方法や日程などに関して、ロシア大統領選挙の後に打ち合わせをする」「我々は相互に受け入れ可能な解決策を模索する必要性を十分理解していると、改めて申し上げたい」とラブロフ外相は発言していた。
(2)日本の立場を尊重して北方4島を共同開発
ラブロフ外相は、ロシアが北方4島を開発するあたって日本と協力することが望ましいと言っていた。2011年に表明し、今回の来日でさらに確認されたのは、「協力する際は日本の法的な立場を害してはいけない。日本の主張を考慮して進める」ということだった。
現在、いわゆる「ビザなし交流」で4島を訪れる日本人は、ビザを持たないだけではなく、パスポートも持たずに行くことができる。日本人にとって4島は外国ではないということをロシアは黙認している。共同開発も同じ考え方、やり方で構わないというのが、外相の発言の意味である。
(3)極東開発に日本の支援を要請
今秋にロシアのウラジオストクでAPECサミットが開催され、2015年にはアムール州のボストチヌイ宇宙基地で最初の無人ロケットが打ち上げられる予定だ。それらのことを考えると、極東地域におけるロシアの経済活動はますます活発になっていくだろう。プーチンは、彼の当選をあまり歓迎しない米欧より、東アジアとの関係にもっと力を入れると予想される。
外相の来日時にはまだ公開されていなかったが、プーチン首相は2月7日、極東地方の開発を担当する国営企業を設立するという計画を発表した。主眼は「道路、空港、港湾施設などを発展させる」ことである。中国と韓国だけでなく、日本にも開発に参加してほしいというリクエストが出てくるに違いない。
以上はスタートラインである。ロシアの新大統領はここから日ロ関係の新しい「ロードマップ」を作成し、それに沿って動いてもらいたい。また、領土問題を解決するためには、対話の雰囲気をつくることも重要だ。両国は前提条件なしで会話に臨み、軽はずみで余計な発言をできるだけ避けるべきである。
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