教育基本条例案の修正案が協議された30日の大阪府市統合本部。3時間半に及んだ会合では、府立高校の学区撤廃や統廃合、校長の公募制など重要事項が、大阪維新の会から府議会に提出された議案に沿う形で次々と決められていった。府の教育委員らは懸命に抵抗。しかし、最終的には、維新代表の橋下徹市長と幹事長の松井一郎知事の「鶴の一声」になすすべもなかった。【林由紀子、佐藤慶、茶谷亮】
最も激しい応酬があったのが学区撤廃を巡る議論。松井知事が13年度からの撤廃を表明したのに対し、府教委側からは「あと1年しかなく非常に厳しい」(中西正人教育長)と準備期間の短さを指摘する意見が相次いだ。
これに対し、堺屋太一元経済企画庁長官は「1年でできるかで(生徒の)人生が決まる。子供の運命を背負ってるんですよ」と迫るなど複数の特別顧問が反論。結局、橋下市長が「14年度にやるということで13年度から制度設計に入る」と述べ、松井知事も「14年度の撤廃に向け、制度を変えるため問題点を解決していく」と結論付けた。
終了後、中西教育長は記者団に「十分な議論が尽くされていない。決して賛成ではないが、制度設計をせざるを得ない」と不満を表明。陰山英男府教育委員は一定評価しつつも「子供たちに対する影響はかなりあるだろう」と懸念を示した。
ある府立高校の校長は「公立高校は農業や商業など多様な受け皿を用意してこそ、生徒のニーズに応えられる。市場原理で語るのはふさわしくない」と批判。また、公立中学の校長は「経済的に恵まれず学力も低い子供ほど選択肢が狭まる。二極化が進むのではないか」と心配した。
毎日新聞 2012年1月31日 大阪朝刊