ブレジンスキー氏は「中国は韓国統一の過程で決定的な影響力を行使すると予想される。その場合、“韓米同盟の縮小と中国による統一支援”を取り引きせざるを得ない状況になる可能性がある」と予想しているが、韓国の政治勢力は、この言葉に込められた意味合いをしっかりと受け止めなければならない。米国は何か機会があるたびに「韓国と米国は共に血を流し合った血盟関係だ」などと強調してきた。しかしその一方で米国は、韓国が現在あるいは将来の国益をかけてどのような決断を下すかに注目しており、それに伴う対応策についても慎重に検討を進めてきた。韓国では前政権の民主党が韓米自由貿易協定(FTA)に向けた交渉を最初に提議し、一定の結論を下した。ところがその民主党の流れを受け継ぐ民主統合党は、韓米FTAが妥結すると同時にその破棄を公言している。このように不安定な状況を目の当たりにした米国は、政府と民間の双方が、これまで自分たちが韓国に提供してきた安全保障面での支援について検討し直しているわけだが、これはある意味当然のことかもしれない。
ブレジンスキー氏が投じた最後の質問にも、韓国の政治家や政治団体は回答を提示しなければならない。新たな核の傘を提供する米国以外の強大国を探すのか、あるいは韓国が独自に核兵器を開発するのかということだ。この問題も、韓国の安全保障政策の方向性に決定的な影響を及ぼすだろう。
世界の同盟史には、強大国に浮上する隣国への吸収や影響を拒絶するために、その強大国の影響力を相殺する他の同盟国を探し求める国の苦労が数多く描かれている。韓国ではこれまで60年にわたり、米国がその役割を果してきたわけだが、これについても決定的な選択の時期が近づいているのだ。韓国で政治に責任を持つべき者たちは、インターネット放送「ナヌン・コムスダ(私は小ざかしいの意、通称ナッコムス)」のように軽々しく無責任な言動を取るべきではない。このような態度は国と5000万の国民を危険な状況に追いやってしまうからだ。政権獲得を目指す人物も政党も、今なお厳然と近づいている国家生存の岐路で、大韓民国と国民が今後も生存し続けるために進むべき道を提示する義務がある。