雪山埋め尽くす黒い汚染土―飯舘村の仮置き場ルポ
オルタナ 2月14日(火)12時8分配信
飯舘村役場から車で東へ10分ほど、山あいの舗装道を進む。途中、作業着姿の警備員に呼び止められたが、村民の案内ということで門を抜けることができた。石造りの看板には「飯舘クリアセンター」の名称。もともとは村のごみ焼却施設だ。そこに隣接する国有林約30ha(ヘクタール)が汚染土壌の仮置き場とされている。
「新潟」や「三重」ナンバーのトラックが行き交い、荷台に山積みされた黒い土のう袋を大型クレーン3台が次々につり上げては木々の間に敷き詰めていく。白く美しい雪山と黒い土のう袋のコントラストは強烈だ。
除染モデル事業は国が日本原子力研究開発機構福島技術本部に委託、大成建設JVの請け負いで昨年末から着手した。飯舘では役場周辺と草野地区の2カ所を中心とした約17haが対象。道路を高圧洗浄したり側溝の泥をさらったりする除染作業自体は1月末までの計画とされていたが、取材に入った2月上旬の時点でまだ作業は行われていた。
小学校の敷地内に積まれていた土のう袋に線量計をかざすと、みるみるうちに数値が上昇、毎時32μSv(マイクロシーベルト)を超えた。こうした高濃度の汚染土が「クリアセンター」に集められており、今後は遮水シートや盛り土などをして放射線を遮へいする工事が進められる。
工事関係者は「すでに敷地の8割以上は埋まっている」と答えた。しかしこれはあくまでモデル事業。村の試算では今後5年間で2700ha近くの田畑や宅地の除染が必要で、約140万立方メートルの汚染土が排出される。村の75%を占める森林の除染と合わせて約3224億円の費用がかかる見込みだ。
市町村の仮置き場は3年間ほどの保管がめどとされ、その間に福島県内で中間貯蔵施設が建設されなければならない。国は原発立地地域での施設建設を探るが、交渉は難航している。その間、汚染土は村内を転々とさまようことになりそうだ。
「これは仮、仮、仮…置き場だ。一体この村はどうなるのか」。土のう袋で埋め尽くされる山を見渡して、村民はつぶやいた。(オルタナ編集委員=関口威人)
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最終更新:2月14日(火)12時8分
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