転機の原子力 第二部 サイクルの現場で

プルサーマル再び停滞
(2012/02/12)
 六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で取り出したプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を原発で燃やすプルサーマル計画は、春以降に全国の原発が再稼働した場合でも、再び停滞する可能性が強まっている。国がプルサーマルを含む原子力政策を見直しているのに加え、福島第1原発事故を受けて導入に向けた地元側のハードルが高くなったのが要因。国が再処理路線を堅持したとしても、現実にプルトニウム消費が進むかどうかは不透明な情勢だ。
 プルサーマルは現時点でMOX燃料の唯一の消費先。電力業界の相次ぐ不祥事などで計画は延期され続けたが、2009年に佐賀県の九州電力玄海原発3号機で初めて実施された。現在は海外で製造された燃料を使用しているが、将来的には六ケ所村のMOX燃料加工工場で製造した燃料を使う予定だ。
 玄海でスタートして以降、プルサーマルは四国電力伊方原発3号機(愛媛県)、東京電力福島第1原発3号機、関西電力高浜原発3号機(福井県)で開始されるなど、15年度までに16〜18基で導入する電力業界の計画は順調に進んでいた。
 しかし昨年3月の原発事故で情勢は一変。既にプルサーマルを導入済みの原発では、事故を起こした福島第1原発3号機の廃炉が確定しているのに加え、他でも地元側が慎重姿勢を強めている。
 高浜3号機を抱え、4号機でも実施予定だった高浜町の野瀬豊町長は、本紙取材に「政府がエネルギー政策を明確にしない現状では、原発を再稼働させたとしてもMOXではなく、通常のウラン燃料になる」と指摘。
 玄海3号機のある玄海町の岸本英雄町長は取材に「まずは再稼働させること。プルサーマルにはこだわらない」と述べ、プルサーマルが再稼働のネックになる場合は、3号機に関する地元了解などの判断を後回しにする可能性を示唆した。
 伊方3号機ではMOX燃料の比率を高める計画だったが、事故後に見送りを決めた。また、導入済み原発の地元は、国の政策が不透明なことによって、使用済みMOX燃料の処分方法が決まるめどが立たないことにも懸念を強めている。
 一方、導入準備を進めていた原発でも計画は停滞。東北電力女川原発3号機(宮城県)は震災で損傷し、中部電力浜岡4号機(静岡県)は事故後に政府要請で停止している。
 北海道電力はプルサーマルに関する住民説明会のやらせ問題で泊原発3号機の計画を凍結。建設中の電源開発(Jパワー)大間原発はプルトニウム消費の主力として燃料全てをMOXで賄う計画だったが、建設の継続自体が不透明だ。
 MOX燃料の消費先が狭まれば、再処理工場は存在意義を問われることになる。国が進める政策見直しで、プルサーマルをめぐる現状が論点に浮上する可能性もある。(今井崇雄)