転機の原子力 第二部 サイクルの現場で
(1)動かぬ再処理 |
(2012/02/14) |
1月30日、青森市内で開かれた日本原燃の定例会見。川井吉彦社長に対する記者の質問は、六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で、近く3年ぶりに再開予定だったガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)の製造試験に集中した。 再開前の準備段階に当たる作動確認は、数日前から不調。川井社長は苦渋の表情を浮かべながら「原因は分からない」「今しばらく時間がほしい」と繰り返した。 原燃が、2月上旬としていた試験再開の延期を発表したのは、その4日後。中村裕行再処理計画部長は、自らに言い聞かせるように語った。「時間はかかるが、ここは急がば回れだ」―。 ◇ ◇ 全国の原発で燃やし終えた使用済み核燃料から、再び燃やせるプルトニウムとウランを取り出す再処理工場。もう一つの役割が、残りの放射性物質(高レベル廃液)をガラスと固めて安定化させる、固化体の製造だ。 昨年3月の福島第1原発事故では、原子炉近くの貯蔵プールに大量の使用済み核燃料がたまっていることが事態を深刻化させた。原子力問題に詳しい吉岡斉九州大学副学長は「使用済み核燃料を原発にためておくのは危険極まりないことが分かった」と強調する。 現時点で原発から使用済み核燃料を搬出できる唯一の場所が、再処理工場。いずれはむつ市の中間貯蔵施設も加わる。再処理工場の場合、固化体として安定化させれば、少なくともプールにある使用済み核燃料が自らの熱で溶けて大量の放射性物質を外部放出するような懸念はなくなる。 「原発事故後はプルトニウムの抽出なんかよりも、使用済み核燃料の安定化の方がよっぽど重要な要素になった。再処理工場が生き残る道は固化体の製造だ」―。長年にわたって核燃料サイクルを推進してきた自民党県議は、こう指摘する。 しかし、再処理工場は固化体がどうしても安定的に製造できず、完成の一歩手前で4年も足踏みを続けている。工場の核燃料貯蔵プールも満杯間近で、もう受け入れる余裕はほとんどない。 春以降に原発が再稼働を始めれば、全国の原発にたまる使用済み核燃料は再び増加へ向かう。 ◇ ◇ 一方、再処理工場で取り出すプルトニウムの使い道も、原発事故後に再び不透明感を強めている。将来的な消費先の本命である高速増殖炉は、原型炉・もんじゅの運転再開にめどが立たず、実用化は見通せない。 現時点では唯一の消費先となるプルサーマルも、実施に向けた地元側のハードルが高まっており、原発が再稼働した場合でも停滞は避けられそうにない。サイクル推進派にとって、情勢は厳しさを増している。 2月7日、国の原子力政策大綱策定会議。原燃の試験延期を受けて勢いを得たサイクル中止派は、急先鋒(せんぽう)の金子勝慶応大学教授が反対論をまくし立てた。 「国民負担を無視している。サイクルは失敗した公共事業の典型だ」 |
- ■ 東北の旅は八戸へ
[PR]
- ■ みんなが気になる
- ■ 不動産・住まい
- ■ 保険
- ■ 金融・資産運用
- ■ 美容・医療
- ■ 自動車
[PR]