心はいつでもヘビーだけど顔では大丈夫、大丈夫
2011年10月26日 06:22am
2002年9月、わたしが学生時代に過ごしたシアトルへ妻を連れて行った時の出来事。
車で少し遠出しようと、フェリーでカナダのVictoria(ビクトリア)に行くことにした。シアトルから車で2〜3時間半島沿いの田舎道を運転してPort Angelesという町に行くとそこからカナダのブリティッシュコロンビア州の州都Victoriaに行くフェリーが出ている。Victoriaはとっても景色が綺麗でのんびりしたヨーロッパのいい雰囲気が漂うの小さな街。
ちなみにブリティッシュコロンビア州は西海岸に位置するVancouver(バンクーバー)がある州。その州都はVancouverから少し離れた島にある。
Port Angelesのフェリー乗り場で乗り入れる車の列に並んで次のフェリーに乗るのを小一時間待っていた時のことだった。
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わたし達の車の前には、古〜いすすけた茶色のいかにもって感じのアメ車。ただやたらデカイだけの鉄の塊みたいなの。よくハリウッド映画とかに出てきますよね。そう、あんな感じの車が停まってた。その左隣、つまりわたし達の左斜め前には、ピカピカの新しいシルバーのポルシェ。
アメ車のドアが開いて中から結構お年をめしたお婆さんが車の外へ出てきた。その時アメ車の大きな重たいドアが、ポルシェにガンっ!って当たったけど、お婆さんは耳が遠くて気づかなかったのかゆっくり歩いてターミナルの建物の方へ行ってしまった。たぶんまだフェリーが来る時間まで30分以上あるからトイレに行ったか、何かコーヒーでも買いに行ったのかもしれない。
お婆さんが行った後、ポルシェから初老の紳士がコーヒーマグ片手に降りてきた。クリント・イーストウッドみたいな感じの人。凄くポルシェがしっくりくる。その人はドアが当たったボディの辺りを確認しながら苦笑いしていた。
その光景を車内から見ていたわたし達。
「お婆さん戻ってきたらあのおじさんどうすると思う?」
「そりゃここアメリカだし保険がどうのとか、弁護士がどうのとか、訴えるぞとかなるんじゃない?」
「普通はめっちゃ怒るよね。」
「姫路や大阪やったらかなりヤバいよ。ポルシェやし。」
「まず第一声に注目やな。」
みたいな事を話しながら、お婆さんが戻ってくるのを待ってた。
しばらくして、お婆さんが戻ってくるのが見え、わたし達も車の外へ出て注目していたら、まったく予想外の展開になった。
おじさんは少し離れたところまで行って「Hi how you doing ?」って優しく話しかけてお婆さんに寄り添って車までエスコートを始めた。そして、でっかいアメ車のドアを開けてあげて、ポルシェに当たらないようにドアと車の間に立ち、お婆さんを車に乗せてあげながら、「Have a nice trip !」ってニコっと笑顔でドアを優しく閉めた。
もうなんて言うか呆然としてしまった。さっきの予想していた自分達が恥ずかしくなったっていうか、おじさんカッコよすぎ。感動した。
自分だったらどうしただろう。あんな対応ができるんだろうか。
嫌、きっと怒ってると思う。そんな事を考えながらフェリーに乗り込みVictoriaに向けてPort Angelesを出発した。
心に余裕のある人の行動ってなんかとっても素敵ですよね。普段からそういう事ができないと、こんな時だけかっこいい態度はとれないはずだから、きっとこのおじさんは普段から素敵なんだと思う。
それを踏まえて、最近よく見聞きする世間の荒れた感じはなんなんだ。社会全体で苛立ってる感じ。とても息苦しい。
なんか気に入らない事や嫌な事に遭遇すると直ぐに「死ね!」とか言う人がいる。言わなくてもTweetしたりレビューに書く人が多い。「死ね」って言ってホントに死んじゃったらどうするの?って思う。「ホビロン」とか言い換えるくらいユーモアがあればまだかわいいけど。
人身事故とか悪天候とかで電車が止まってる時に、改札の駅員さんを怒鳴り散らしてる人とか、その駅員さんに文句言っても事態が好転するわけでも無くどうしようも無いのにあたり構わず怒りをぶちまけるいい歳した人達。
説明読まずに買って失敗した無料とか数百円のアプリでそこまで書くかってほど辛辣なレビューを書き散らす人達。
みんな、もうちょっと心に余裕をもってゆったりふわっとした方が色々といい事があるんじゃないかと思うよ。
わたしが座右の銘として真似してる佐野元春さんの座右の銘「心はいつでもヘビーだけど顔では大丈夫、大丈夫」
デビューアルバムのBACK TO THE STREETの1曲目に収録されている「夜のスウィンガー」って曲の一節に「騙されてもまだ自由でいたいから 心はいつでもヘビーだけど顔では大丈夫、大丈夫」ってフレーズがある。つらいことや嫌なことが日々いっぱいふりかかって心がズタズタになることばかりだけど、余裕しゃくしゃくな感じでいられるような人間でありたいなぁって思うわけです。
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このブログを書いている人
おかだよういち:
Designer + Photographer
兵庫県相生市在住。
1986〜1992年までシアトルに滞在。Northwest College of Artのビジュアルコミュニケーション科でアート・写真・デザインを学ぶ。その後東京のデジタルイメージ制作会社FOTONに入社。6年間の広告ビジュアル制作で修行し、現在は関西でWeb制作や撮影を中心にフリーランスで活動すること十数年。各地のセミナーイベントなどに頻繁に出没する。
おかだよういち:
Designer + Photographer
兵庫県相生市在住。 1986〜1992年までシアトルに滞在。Northwest College of Artのビジュアルコミュニケーション科でアート・写真・デザインを学ぶ。その後東京のデジタルイメージ制作会社FOTONに入社。6年間の広告ビジュアル制作で修行し、現在は関西でWeb制作や撮影を中心にフリーランスで活動すること十数年。各地のセミナーイベントなどに頻繁に出没する。