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夕刊コラム「紙つぶて」 杉浦真弓(名古屋市立大産科婦人科教授) 産婦人科医の生き方

(2012年1月30日) 【中日新聞】【夕刊】【その他】 この記事を印刷する

努力の積み重ねが最高水準維持に

 20年間の不育症研究が少子化対策に貢献したとして、産科医療功労者の厚生労働大臣表彰を受けました。支えてくださった皆さまに心から感謝いたします。先週、授賞式に行ってきましたが、受賞者の多くの方は、地域周産期を支える診療所の先生でした。

 以前、10年以上実家近くの産婦人科医院で週末の代務をしていました。ものすごく忙しくて月に1度が限度でした。当時1人で年間1000分娩(ぶんべん)を扱っておられた院長先生は、私が行くときは、つかの間の自由を得て医院から逃げるように遊びに行かれました。

 365日、リスクと隣り合わせの分娩が頭から離れないのは、想像を絶する生活です。わが国の周産期医療は世界最高水準を維持していますが、産科・小児科・麻酔科医、助産師らの毎日の努力の積み重ねによるものです。

 米国の学会で産婦人科医院3代目の息子さんに会ったとき、大学で素晴らしい研究をしていたため跡を継ぐか心配になり、質問しました。ハートのある父親やスタッフを見て育った彼は、いずれは地域の妊婦さんを守ることをライフワークにするそうです。もうじき生まれる息子についても「産婦人科医になります。選択権はない、僕もそうだったから」と笑っていました。

 分娩をやめる施設が増加する昨今ですが、元気のいい産婦人科医もたくさんいます。進路に悩む皆さん、産婦人科医、助産師という生き方はいかがでしょうか。

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