西日本新聞

糸を入れることで増す重み 清川あさみさん(29)

2009年10月03日 18:13

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─人気女優22人の写真に刺しゅうした昨年の「美女採集」展は注目を集めました。針を持ったのはいつごろ?

清川 文化服装学院の卒業制作で、カッターシャツとかの襟芯に使う接着芯を切り張りした作品を作ったのが最初です。油絵をやっていたので、先生にも絵画的な作品を勧められて。子どものころから工作好きだったんです。母が保育士で、幼稚園の飾りを作るのを手伝ってました。

─写真に針を入れるアイデアはどこから?

清川 もともと写真を見るのがすごく好きだったんです。あるとき、写真の上にポンと糸がのっかっていたのを見て、これを縫い付けてみたらどうなるだろう、と。最初は怖かったですよ。人の写真に針を入れるわけですから。でも、糸を入れることで重みや存在感が増すと感じるようになってきました。デザインやファッション、油絵…身につけてきたことがひとつに結実したという感覚ですね。

─広告やCDジャケットなど、アートディレクター的な仕事もありますが、モチーフはどうやって生み出していますか。

清川 淡路島(兵庫県)の出身なので、海とか自然とかの風景を思い浮かべるときは、何もなくても描き出せます。CDジャケットだと、そのアーティストが持っている根本を引き出そうと。例えば木村カエラちゃんの「リルラ リルハ」だと、普通にかわいいだけじゃない、カエラちゃんが持っている強さを意識しました。

─雑誌「ZIPPER」などでの読者モデル時代はカリスマ的な人気がありました。

清川 19歳から21歳までです。クリエーティブ感覚をはぐくんだと思います。これもやっぱり「自分をつくる」という意識があった。私は身長が150センチと小さいから、1を10に変えていこうと。読者の人に「自分もこうすればできるんじゃないか」って思ってもらえるよう、いろんなアレンジを伝えようとしてました。

─刺激を受ける人は?

清川 特定の誰、というより勢いある作品を作る人が好きです。美に限らず、感覚と理論の両方をあわせ持っている人がいい。自分も手作業だから感覚的に見られがちだけど、よく見ると構造的な計算があることに気付いてもらえるはずです。

─29歳を迎えたばかり。年を重ねるごとに、作品にも変化が出てきましたか。

清川 それはもう。始めたころは、手法ばかりにこだわって、がむしゃらに色をのせることが多かった。でもだんだん作る意味やメッセージを考えるようになりました。一番大事にしてるのは余白。見てくれる人が、自分の人生や美的感覚を作品に重ね合わせてくれたら、そのときこそ「コラボレーション」が生まれると思うんです。
 (文・平原奈央子、写真・大矢海寿帆)

 清川あさみ(きよかわ・あさみ)さんは1979年兵庫県出身。文化服装学院在学中に雑誌の読者モデルとして活動を始め、卒業後から写真に刺しゅうをするなど斬新なアートを発表している。21日まで福岡市・天神の三菱地所アルティアム(イムズ8階)=092(733)2050=で個展「HAZY DREAM」を開催中。

=2008/10/05付 西日本新聞朝刊=

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