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きょうのコラム「時鐘」 2012年2月12日
ふとんから抜け出すのがつらい寒い朝が続く。まだ寝ていたいという手ごわい誘惑(ゆうわく)としばし闘い、意を決して寝床(ねどこ)から抜け出す。子どものころから、そんな「儀式(ぎしき)」を繰り返す
能登に伝わる風習(ふうしゅう)「あえのこと」の神さまは、雪深い田にもう戻られたそうである。ひと冬を過ごした家を出て、田に実りをもたらす仕事を始められた。グズグズふとんにしがみついていては、神さまにしかられる 能登の民俗(みんぞく)行事「アマメハギ」も先ごろ行われた。いろりで怠(なま)けた足には、アマメ(火だこ)ができる。それをはぎ取りに来た鬼(おに)たちは、冬ごもりの終わりを告げる使いだろう。神さまや鬼が根付く暮らしがある。漫画ヒラリ君のおばあちゃんの口癖(くちぐせ)を借りるなら、「何とリクツな」風土だろう 冬の行事「フードピア」は、食物の英語「フード」に「風土」も重ねた造語(ぞうご)とか。飛び切りのごちそうや旬(しゅん)の地物がそろう食の風土も、「リクツな」恵みであり、胸を張れるふるさと自慢である 手ごわい寝床のぬくもりも、食の誘惑にはかなうまい。雪との闘いとの明け暮れに、楽しい食でひと息つけるのがありがたい。 |