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2号機温度上昇 温度計故障か

2月13日 19時16分

2号機温度上昇 温度計故障か
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東京電力福島第一原子力発電所2号機で、原子炉の一部の温度計の値が上昇している問題で、東京電力が調べたところ、温度計の電気抵抗の値が通常とは異なっていることが分かり、東京電力は温度計の中の配線の一部が断線して故障している可能性が高いという見方を示しました。

福島第一原発2号機では、原子炉の底にある温度計の1つの値が上昇して、12日午後、冷温停止状態を維持できているか判断する保安上の目安の温度、80度を初めて超え、13日正午には94.9度まで上がりました。
一方で、同じ高さにある別の2つの温度計の値が33度前後まで下がるなど、ほかの温度計は低下傾向を示していることから、東京電力は故障したのではないかとみて電気を流して温度計の状態を調べました。
その結果、温度計の電気抵抗が通常とは異なり、およそ1.7倍と大きくなっていることが分かり、東京電力は、温度計の中の配線の一部が断線した場合にこうした現象が起きるとして、故障した可能性が高いという見方を示しました。
東京電力は、さらに別の方法で断線していないか調べたうえで、この温度計が故障していることを最終的に判断することにしています。
また、ほかの温度計が示している値から原子炉は十分冷やされているとして冷温停止状態は維持できているとしていますが、当面は、現在の原子炉の注水量を維持して、慎重に監視を続けることにしています。

原子炉の状態把握の難しさ “熱電対”とは

今回の温度計の問題は、メルトダウンを起こした原子炉の状態を正確に把握することが、いかに難しいかを改めて浮き彫りにしました。
原子炉の内部の温度を測る温度計は“熱電対”と呼ばれる計器を使って測定しています。
“熱電対”は異なる金属でできた2本の電線をつなげて電気回路にしたもので、つなげた部分の2か所の接点に温度差がある場合、電圧が発生し、その大きさから温度を推定します。
東京電力によりますと、福島第一原発の原子炉や格納容器の温度計は、すべて熱電対タイプで、今回の事故では、メルトダウンが起きて、原子炉の温度が一時的に300度から400度という高温にさらされたため、回路の電気抵抗が変わるなどして、温度計が正しく測定できない可能性があるということです。
このため、東京電力は、すべての温度計の信頼性を評価し、このうち2号機の原子炉周辺に取り付けられた40の温度計については、評価の結果、正常だったのが2つで、1つが断線して計測が不能、33の温度計は、計測結果に影響を及ぼす可能性がある「絶縁性能の低下」などと判定されました。
この33の温度計については、事故と同じような状況を作って模擬実験を行った結果、1つを除いて、温度計の指示値と実験で得られた値との誤差が、およそ8度の範囲に収まり、使用可能と評価され、今回、問題となっている温度計もこの中に含まれていました。
2号機では、これまでに少なくとも6つの温度計が故障しており、最近では、ことし1月に原子炉の底から制御棒を挿入する配管に取り付けられた温度計が故障しています。
今回の温度計が故障かどうか、まだ確定していませんが、今回の問題は、原子炉に近づけず、容易に温度計をはじめとした計器類の修理ができない状況のなかで、メルトダウンを起こした原子炉の状態を正確に把握することが、いかに難しいかを改めて浮き彫りにしています。

“故障も考慮し別の方法も”

また、原子炉の設備や構造に詳しい法政大学の宮野廣客員教授は「原発の温度計は、異なる2つの金属に流れる電圧の変化から温度を測る構造になっているが、原子炉容器の壁に溶接されている温度計の先端が高温にさらされて外れたり、中に水が入ったりすると、金属の絶縁体が劣化し、故障する可能性がある」と指摘しています。
そのうえで「ほかの温度計がすべて下がっていることを考えると、局所的に1か所だけ温度が高くなるのは考えにくく、この温度計が故障したと考えるのは妥当だと思う」と話しています。
その一方で、「ただし、想定を超えることはいくらでもあるので、実際に温度が上がっているという可能性を考えておくことも重要だ。常に温度を監視しながら注水量を増やしながら水をかけて冷却することが必要だ」と話しています。
また、「今ある温度計が故障してなくなる事態も想定して、事前に配管や貫通部を使うなど、外から温度を測る別の方法を考えておく必要がある」と指摘しています。