2011年12月15日 10時53分
【ワシントン白戸圭一】オバマ米大統領は14日、米ノースカロライナ州のフォートブラッグ陸軍基地でイラク帰還米兵を前に演説し、「イラクの未来は国民の手に委ねられる。今日をもってイラクでの米国の戦争は終わる」と述べ、03年3月から続いてきたイラク戦争の終結を宣言した。旧フセイン政権による大量破壊兵器開発を理由にブッシュ前米政権時代に開始され、国際社会の分断を招いた戦争は8年9カ月を経て幕を閉じる。
来年の大統領選で再選を目指すオバマ大統領は、演説で「お帰りなさい」と帰還兵に呼びかけ、「数日中に最後の部隊がイラク出国を始め、米軍の歴史で最も特別な一章が幕を閉じる」「イラク戦争は間もなく歴史の一部になる」と述べ、公約に掲げたイラクからの撤収完了を誇示した。バグダッドでは15日に米軍部隊の旗を降ろす式典が開かれる予定だ。
大統領は09年1月の就任前にはイラク戦争に反対していたが、演説では「我々は、安定し、民衆に選ばれた政府を持つイラクを去る」と述べ、イラク民主化の成果を強調した。一方で「戦争終結は開戦より難しい」とも語り、イラク治安部隊への権限移譲が困難だったことを認めた。
米国防総省によると、イラク戦争には約150万人の米兵が投入され、4487人(13日現在)の米兵・米文官が死亡。イラクの民間人犠牲者数は非政府組織「イラク・ボディー・カウント」が10万4080~11万3728人と推計しているが、正確な数は分かっていない。
大統領は演説で「戦争の代償を肝に銘じている」と犠牲者に弔意を表明、「戦争にはさまざまな困難があった。国内でも賛否両論があった」と述べ、内外で広がった反戦世論にも言及した。開戦理由とされた大量破壊兵器は発見されず、混乱でイラクが「国際テロの温床」と化したこともあり、米国の国際的地位の低下を招いた。
オバマ大統領は就任後、14万4000人だったイラク駐留米軍の段階的撤収に着手し、昨年8月に戦闘部隊の撤収を完了した。その後、約4万人の米兵がイラク治安部隊の訓練などに従事。米政府内には駐留継続を望む声があったが、大統領が今年10月に年内の完全撤収を決断した。