2011年12月14日 15時0分 更新:12月14日 15時13分
大阪弁護士会は、裁判所から容疑者段階での国選弁護人の指名依頼を受ける際、知的障害や精神障害の有無を連絡してもらい、こうした障害に関する知識を持つ弁護士を派遣する新制度を始めた。逮捕後の早い時点から専門的な弁護士が就くことで、障害の特性に配慮した取り調べや福祉的支援を図ることが可能になるメリットがあるという。
制度は11月にスタート。容疑者が精神障害者保健福祉手帳や、知的障害者に交付される「療育手帳」を所持していたり、特別支援学校の通学歴がある場合、裁判所から国選弁護人の指名依頼を受ける日本司法支援センター大阪地方事務所(法テラス大阪)に情報提供してもらう。大阪弁護士会は国選弁護人に登録した約2000人のうち、研修を受けた約100人から候補者を推薦。法テラスが裁判所に通知し、選任される。
同弁護士会関係者によると、最初の依頼があった11月23日から12月1日までに、裁判所から「障害あり」との情報を受けたのは既に6件に上り、いずれも障害に詳しい国選弁護人を派遣した。
一般的に、知的障害のある容疑者は迎合しやすく、取り調べ内容を理解しないまま虚偽を交えた自白をする恐れがあるとされる。昨年11月には大阪地検堺支部が放火を自白した知的障害の男性の起訴を取り消したケースもあった。この事件では検事が自白を誤誘導した疑いも指摘された。
こうしたことから最高検は今年、知的障害の疑いのある容疑者を対象にした取り調べの録音・録画の試行を始めている。一方で、逮捕・公判段階から福祉の視点に基づく容疑者のサポートの重要性も指摘されつつある。
大阪弁護士会の辻川圭乃弁護士は「捜査段階から専門知識のある弁護士が就くことで、障害特性に配慮した取り調べにつながり冤罪(えんざい)を防ぐことができる。起訴猶予や執行猶予になる事件では弁護士が早く福祉につなげることで再犯の連鎖を断ち切るきっかけになる」と意義を語る。この取り組みは厚生労働省の研究班の会合でも報告され、研究分担者の荒中(あら・ただし)弁護士(仙台弁護士会)は「大阪モデルを全国に広げるべきだ」と指摘した。【長野宏美、石川淳一】