「小学三年生」「小学四年生」が休刊!学年誌は不要なのか?
現在発売中の2012年3月号をもって、小学館の学年誌「小学三年生」「小学四年生」は休刊となる。大正時代に創刊されたという両誌は、それぞれ88年、89年の歴史に終止符を打つ。
同社によると、1973年には「三年生」が4月号で102万部、「四年生」も82万部の最大部数を記録したものの、今年度に入ってからは「三年生」がわずか4〜5万部、「四年生」は3〜4万部に低迷していたそうだ。ちなみに同社の「小学五年生」「小学六年生」の両学年誌は、すでに2年前に休刊している。
休刊の理由について同社広報室は、「『学年別』『男女共通』で『総合的な内容を持つ』雑誌という刊行形態の枠内では、成長と変化が著しい小学生世代のニーズに必ずしも合致しないという現状になってきている」とコメントしている。
筆者はちょうど小四の娘がいるのだが、正直なところ、それまでは実家への帰省など、長距離移動の旅の友として買うこと以外に、こうした学年誌をわが子に買い与えることはなかった。また残念ながら、わが子が本誌を継続的に所望することもなかった。
というわけで、昨年12月に休刊第一報が発表されて以降の1月号から、このたび最終号となる3月号までの本誌を購入して、中身を検証してみた。
1月号の巻頭特集は、「ゲーム機の歴史」として、親にとっても懐かしいファミコンの登場から、ゲーム機の変遷と進化を時系列で振り返り、最新のゲームソフトまでを紹介していた。
続けて「クリパ大作戦」という季節テーマの女の子向けファッションページ、「神秘の天体ショー 皆既月食観測ガイド」、「家電分解SHOW」、「動物の持ち方 抱き方 触り方」というのがカラーページの構成。
モノクロページからは、「相田みつをさんの言葉だもの」で同氏の代表作を解説。さらに「ドクターヘリの裏側」「2012年プロ野球新時代がやってくる!!」「日本一長い○○図鑑」といった企画が並ぶ。
そして連載コーナー「10才の心とからだレッスン」で、この号では女子の月経についての解説があり、あとはジャニーズやAKBをはじめとした芸能情報ページ、懸賞ページ、読者投稿ハガキ、占いが続く。
さらに学年誌ならではの学習コーナーとして、ドラえもんがナビゲートする国語と、名探偵コナンがナビゲートする算数の学習ドリルページ……
という流れ。この盛りだくさんな構成こそ“学年誌”ならではの魅力である。
2月号では巻頭ふろく「日本全国珍地名マップ」で、げろ(=下呂・岐阜県)、はげ(=半家・高知県)、トトロ(=土々呂・宮崎県)などの珍地名が紹介されているほか、本誌特集では、「“てぶぐるみ”アニマル」として、てぶくろを使ったカエルやヒヨコのつくり方のガイド、また「高IQ集団MENSAに潜入!」という企画では、IQ140以上の天才集団「MENSA」に編集部員が挑戦している。
そして、「人類宇宙探査計画」、「錯視で不思議体験」、また潜水艦の内部を取材する「潜水艦の裏側」「インド式計算カンタン入門塾」と続き、連載「10才の心とからだレッスン」では、男子の“射精”について解説。
最終号となる3月号では、巻頭ふろくに“休刊ゴメンナサイ!”的なふろくとして「小学五・六年生で習う漢字ポスター」が付き、本誌企画では「東京スカイツリー」「金環日食」「ロンドン五輪」といった今年のイベント紹介のほか、2012年12月22日に人類滅亡を予言したマヤ暦の解説も特集されている。
さらに付け加えると、各号の付録は「コミックSHO4」という別冊だ。いまなお健在(!)の『あさりちゃん』をはじめ、『名探偵コナン』、『ポケットモンスター』といった定番のレギュラー漫画に加え、1月号付録では、「イナズマイレブン誕生物語」、3月号付録では「平清盛物語」といった、旬の読み切り漫画も収録されていた。
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さて、ここまで書いてきた上で告白するのだが、じつは筆者、同種の学年誌、『中学一年コース』の最終号を見届けた編集者であった。発行元は違うのだが、私が携わっていた学研の中学生向け学年誌「中学○年コース」は、中一〜中三の三誌が1999年3月号をもって休刊した。そして私はその最期を看取った編集者の一人である。
学年誌の作り手として、当時新米編集者であった私は、よく上司や先輩編集者から、「学年誌とは『幹』である、その『幹』から伸びた『枝葉』が実を付けるような企画を考えよう」と教わったことをよく覚えている。
つまり、学年誌でトライした企画でウケがよいものを、別冊であったり単行本に展開する、その「ウケ」度合いを測る場としての学年誌、という位置づけがあった。そのため、ある意味企画としては「何でもあり」だ。それは上記「小学四年生」の企画内容を見てもご理解いただけるであろう。(…というわけで編集者として学年誌はとても楽しくやりがいがあった)
たとえば、学年誌でファッション企画が人気を集めれば「ファッション専門誌」が生まれ、漫画がウケれば「漫画専門誌」が生まれ、芸能情報がウケれば「芸能専門誌」が生まれ、学習情報がウケれば「学習参考書」が生まれ、未確認生物・超常現象情報がウケれば「オカルト専門誌」が生まれる、という構造があったのだ。
しかし皮肉なことに、その学年誌の「幹」の養分が「枝葉」に流れることで、むしろ、その「枝葉」が新たな「幹」になってしまい、本来の「幹」が枯れゆく状況に瀕してしまったのである。
ただ私は、“最期の学年誌編集者”の一人として思う。「学年誌」とは、例えれば栄養のバランスがとれた「学校給食」である。子どもの知的好奇心を刺激する特集、ファッション、流行&芸能情報、カラダのこと、定番漫画、読者参加企画など、“アタマの栄養バランス”がほどよくとれており、適度に話を合わせて交友関係を円滑にするツールとしても、学年誌の果たす役割は大きかったはずだ。
学年誌の寿命が低年齢化していくことで、子どもの“アタマの栄養バランス”が、偏ってしまうのではないか、ということを憂う。「楽しいから」「好きだから」だけで早くから専門誌に飛びつくような“知の偏食性”を身に付けるより、なんだかわからないけど、とりあえずバランスのとれた学年誌は、適度に買い与えるだけの存在価値があったと思う。休刊が大変惜しまれる。
学年誌を書店店頭のラックで見かけたら、ぜひ手を伸ばしてみてほしい。
・小学館ファミリーネット
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同社によると、1973年には「三年生」が4月号で102万部、「四年生」も82万部の最大部数を記録したものの、今年度に入ってからは「三年生」がわずか4〜5万部、「四年生」は3〜4万部に低迷していたそうだ。ちなみに同社の「小学五年生」「小学六年生」の両学年誌は、すでに2年前に休刊している。
休刊の理由について同社広報室は、「『学年別』『男女共通』で『総合的な内容を持つ』雑誌という刊行形態の枠内では、成長と変化が著しい小学生世代のニーズに必ずしも合致しないという現状になってきている」とコメントしている。
というわけで、昨年12月に休刊第一報が発表されて以降の1月号から、このたび最終号となる3月号までの本誌を購入して、中身を検証してみた。
1月号の巻頭特集は、「ゲーム機の歴史」として、親にとっても懐かしいファミコンの登場から、ゲーム機の変遷と進化を時系列で振り返り、最新のゲームソフトまでを紹介していた。
続けて「クリパ大作戦」という季節テーマの女の子向けファッションページ、「神秘の天体ショー 皆既月食観測ガイド」、「家電分解SHOW」、「動物の持ち方 抱き方 触り方」というのがカラーページの構成。
モノクロページからは、「相田みつをさんの言葉だもの」で同氏の代表作を解説。さらに「ドクターヘリの裏側」「2012年プロ野球新時代がやってくる!!」「日本一長い○○図鑑」といった企画が並ぶ。
そして連載コーナー「10才の心とからだレッスン」で、この号では女子の月経についての解説があり、あとはジャニーズやAKBをはじめとした芸能情報ページ、懸賞ページ、読者投稿ハガキ、占いが続く。
さらに学年誌ならではの学習コーナーとして、ドラえもんがナビゲートする国語と、名探偵コナンがナビゲートする算数の学習ドリルページ……
という流れ。この盛りだくさんな構成こそ“学年誌”ならではの魅力である。
2月号では巻頭ふろく「日本全国珍地名マップ」で、げろ(=下呂・岐阜県)、はげ(=半家・高知県)、トトロ(=土々呂・宮崎県)などの珍地名が紹介されているほか、本誌特集では、「“てぶぐるみ”アニマル」として、てぶくろを使ったカエルやヒヨコのつくり方のガイド、また「高IQ集団MENSAに潜入!」という企画では、IQ140以上の天才集団「MENSA」に編集部員が挑戦している。
そして、「人類宇宙探査計画」、「錯視で不思議体験」、また潜水艦の内部を取材する「潜水艦の裏側」「インド式計算カンタン入門塾」と続き、連載「10才の心とからだレッスン」では、男子の“射精”について解説。
最終号となる3月号では、巻頭ふろくに“休刊ゴメンナサイ!”的なふろくとして「小学五・六年生で習う漢字ポスター」が付き、本誌企画では「東京スカイツリー」「金環日食」「ロンドン五輪」といった今年のイベント紹介のほか、2012年12月22日に人類滅亡を予言したマヤ暦の解説も特集されている。
さらに付け加えると、各号の付録は「コミックSHO4」という別冊だ。いまなお健在(!)の『あさりちゃん』をはじめ、『名探偵コナン』、『ポケットモンスター』といった定番のレギュラー漫画に加え、1月号付録では、「イナズマイレブン誕生物語」、3月号付録では「平清盛物語」といった、旬の読み切り漫画も収録されていた。
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さて、ここまで書いてきた上で告白するのだが、じつは筆者、同種の学年誌、『中学一年コース』の最終号を見届けた編集者であった。発行元は違うのだが、私が携わっていた学研の中学生向け学年誌「中学○年コース」は、中一〜中三の三誌が1999年3月号をもって休刊した。そして私はその最期を看取った編集者の一人である。
学年誌の作り手として、当時新米編集者であった私は、よく上司や先輩編集者から、「学年誌とは『幹』である、その『幹』から伸びた『枝葉』が実を付けるような企画を考えよう」と教わったことをよく覚えている。
つまり、学年誌でトライした企画でウケがよいものを、別冊であったり単行本に展開する、その「ウケ」度合いを測る場としての学年誌、という位置づけがあった。そのため、ある意味企画としては「何でもあり」だ。それは上記「小学四年生」の企画内容を見てもご理解いただけるであろう。(…というわけで編集者として学年誌はとても楽しくやりがいがあった)
たとえば、学年誌でファッション企画が人気を集めれば「ファッション専門誌」が生まれ、漫画がウケれば「漫画専門誌」が生まれ、芸能情報がウケれば「芸能専門誌」が生まれ、学習情報がウケれば「学習参考書」が生まれ、未確認生物・超常現象情報がウケれば「オカルト専門誌」が生まれる、という構造があったのだ。
しかし皮肉なことに、その学年誌の「幹」の養分が「枝葉」に流れることで、むしろ、その「枝葉」が新たな「幹」になってしまい、本来の「幹」が枯れゆく状況に瀕してしまったのである。
ただ私は、“最期の学年誌編集者”の一人として思う。「学年誌」とは、例えれば栄養のバランスがとれた「学校給食」である。子どもの知的好奇心を刺激する特集、ファッション、流行&芸能情報、カラダのこと、定番漫画、読者参加企画など、“アタマの栄養バランス”がほどよくとれており、適度に話を合わせて交友関係を円滑にするツールとしても、学年誌の果たす役割は大きかったはずだ。
学年誌の寿命が低年齢化していくことで、子どもの“アタマの栄養バランス”が、偏ってしまうのではないか、ということを憂う。「楽しいから」「好きだから」だけで早くから専門誌に飛びつくような“知の偏食性”を身に付けるより、なんだかわからないけど、とりあえずバランスのとれた学年誌は、適度に買い与えるだけの存在価値があったと思う。休刊が大変惜しまれる。
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・小学館ファミリーネット
| 深田洋介 学研の編集者、AllAboutのWebエディターを経て、サイバーエージェントの新規事業コンテストでは子育て支援のネットサービスでグランプリを獲得、その後独立。現在は子育て・教育業界×出版・ネット媒体における深い知識と経験・人脈を駆使して活動中。2001年生まれの娘の父。 |
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